アーティスティックスイミング(AS)日本代表の井村雅代ヘッドコーチ(HC、70)が7日、大阪・門真市内でワクチン接種について感想を述べた。チームを預かる立場として「もちろんワクチンは接種したい。それも1日も早く」と話した。日本代表はこの日開幕した日本選手権にオープン参加をしている。

ワクチンは、国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)が、東京五輪・パラリンピックに出場するアスリートらを対象に、ファイザー社(米国)と共同開発のビオンテック社(ドイツ)から無償提供する覚書に署名したと発表したもの。国民への供給計画とは「別枠」の扱いになる。

井村HCは「五輪が近づいたなという気がして、うれしい気持ちがした」と話した。

4月中旬にはロシア遠征を行った。閑散とした羽田空港から厳戒態勢でロシア入り。現地の空港は多くの人がいたという。「マスクをしているのは20人に1人ぐらい。鼻も出している。『なぜ?』と聞くと『私たちはもうかかったから抗体があるの』と言われた。このギャップは何なのかと思ったが、私たちはベストを尽くそうと」。外部との接触を断つ「バブル」でホテルと会場の往復をした。

帰国後も隔離期間の14日間を過ごした。ホテルのエレベーターを使用せずに非常階段を使い続けた。「何年分も階段を上り下りしました」という。「選手もルールを守ったし、周りの方々が環境を整えてくれて、今まで(感染など)何もないです。(新型コロナウイルスに)五輪の前にかかっては何もならない。1日も早く(選手に)接種させてやりたいのが本音です」。

五輪開催にさまざまな意見があることは理解している。井村HCは「何事も賛否両論があるのはわかります。『やるべきでない』という選手がいることもわかります。でもやはり世界中のアスリートは目指している。目指している選手は、1年延期も何も関係なく、ぶれずにやっていると思う。私は選手に『1%でも開催の可能性があるなら準備しよう。100%なし、といわれたらそのときにやめたらええ。毎日、毎日進化しよう』とずっと言い続けている。この選手たちは暗くなってないし、落ち込んでもいない。『こんなことしていていいのか』と考える暇もない生活をしている」と厳しい指導で選手を鍛え上げる日々を過ごす。

「五輪の舞台でパフォーマンスを見せて、それで争う、競技をする。それがアスリートの夢であり、それが一番のゴールだと思う。その気持ちは変わっていない。1年延期になっただけで、気持ちは全然変わっていません」と口にした。

16年リオデジャネイロ五輪銅メダルの乾友紀子(30=井村ASク)はワクチン接種について「日本水連、JOCの指示に従ってやります。今のところ詳しいことは聞いていないです」とした。その上で自身の意見を問われて「個人的にはワクチンを接種したいと思っています。ウイルスがまん延しているので自分で自分の身を守るという面です」と話した。【益田一弘】

◆井村雅代(いむら・まさよ)1950年(昭25)8月16日、大阪府生まれ。小3で大阪・堺市の浜寺水練学校に入門、中1で競技を始める。78年から日本代表コーチ。84年ロサンゼルスから6大会連続メダル。08年北京、12年ロンドンは中国代表コーチ、16年リオデジャネイロ五輪では再び日本代表ヘッドコーチとしてメダル獲得。指導者として84年から五輪9大会連続メダル。厳しい練習と情熱で知られており、「メダル請負人」とも呼ばれる。