東京パラリンピックで2大会ぶり3度目の金メダルに輝いた世界王者の国枝慎吾(37=ユニクロ)が4大大会の全米も制し、2大会連続優勝の快挙を達成した。3連敗中だった同2位のヒューエット(英国)に6-1、6-4のストレートで快勝。全米2連覇となった。東京パラの再現となった女子決勝で、上地結衣(27)は準優勝だった。

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国枝は疲労困憊(こんぱい)だった。朝、起きたときは疲れで「やばい」と感じた。それでも、パラリンピック王者の意地がある。東京で4日に金メダルを獲得し、6日に渡米。金からわずか9日で、距離で1万キロ以上離れたニューヨークでも頂点に。「信じられない2大会が続いた」と、全米でも王者に輝いた。

マッチポイントで相手のフォアがアウトとなると、国枝は思わず両手を広げ、右手でガッツポーズ。「コートに入る30分前まで、ちょっと目をつぶったら寝てしまいそうだった」。岩見亮コーチからは、「途中でやめてもいい」とアドバイスされていたという。しかし、疲労や過密日程にも負けなかった。

この日の対戦には、東京パラと同じぐらいの重みがあった。今年、全豪と全仏でヒューエットに敗れており、パラリンピックではヒューエット戦が最大の関門とみられた。しかし、ヒューエットは準決勝で敗退。対戦することなく国枝は金メダルを獲得した。

ヒューエットに勝って優勝する-。「最大のライバルを倒してこそ、真のチャンピオン」。その思いが体を突き動かした。第1セットの最初の3ゲームは「ゾーンに入っていた」。1ポイントも落とさないで12ポイント連取。一気に主導権を握り、「パラリンピックを含め、ベストのパフォーマンスだった」と、そのまま押し切った。

すべてを出し切った2週間だった。「人生で一番、幸せな瞬間」。11月には米国で格付けの高いマスターズ大会がある。しかし、今だけは「最高に疲れた。2週間ぐらいは何にもしたくない」。帰国後は「妻のご飯でも食べたいですね」と、愛さんの手料理を心待ちにしていた。

◆国枝の2週間 東京パラ初戦が8月28日。9月4日の決勝までシングルス5試合、ダブルス4試合で、試合時間は計845分。5日にメダル会見を行い6日に渡米。9日に初戦を迎え、シングルス3試合、ダブルス2試合、試合時間計503分。東京パラリンピックと全米で、シングルス8試合、ダブルス6試合、試合時間計1348分、約22時間30分、コートで戦い続けた。

◆全米オープンテニスはWOWOWで全日生放送、同時配信される。