新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の急拡大を受け、政府が全世界を対象にした外国人の新規入国を停止している影響で、国際スケート連盟(ISU)と日本スケート連盟は2日、フィギュアのグランプリ(GP)ファイナル大阪大会(9~12日、東和薬品ラクタブドーム)を中止にすると正式発表した。来年2月に開幕する北京五輪の代表選考に関わる大会の1つで、選考の議論を左右する可能性も出てきた。

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フィギュアスケートの北京五輪前哨戦が消滅した。来年2月4日の開幕まで約2カ月。オミクロン株の脅威でGPファイナル中止に追い込まれた日本連盟は「政府の水際対策強化による外国人の新規入国停止に伴い」と理由を説明し、国際連盟も「渡航制限、検疫、安全への懸念、物流の課題など複雑な状況を鑑みると開催は非常に困難」との見解で決定に理解を示した。

4年ぶり日本開催のGPファイナルには、シリーズの上位6人・6組がエントリー。男子は世界選手権3連覇のネーサン・チェン(米国)ら4選手、女子は世界記録保持者の15歳カミラ・ワリエワ(ロシア)ら5選手、ペア5組、アイスダンス6組が早ければ今週末から入国する予定だった。

今夏の東京五輪までは認められてきたスポーツ団体・選手に対する特例が、今は通用しない現実がある。岸田文雄首相が措置を表明した先月29日から、ファイナルを主管する日本連盟はスポーツ庁と協議を重ねてきた。海外拠点の日本勢を含めて172人の選手、コーチらを受け入れる計画で申請。大会バブル形成の上で実施に向けた準備を並行し、当初は同庁からも「開催に向けて調整中」との回答を水面下で受けていた。

ところが、今年4月の世界国別対抗戦(大阪)では通った個別例外措置の申請が突き返された。水際対策の厳格化を譲らない内閣官房などとの調整が難航。開催可否の最終判断について官邸預かりとなった後、遅い国の決定を待ち、断念を余儀なくされたという。その後、日本連盟がISUと調整して正式に案内した。

国内からは男子の鍵山優真と宇野昌磨、女子の坂本花織、日本人同士のペアでは初の出場を三浦璃来&木原龍一組が決めていた。今年は北京五輪代表選考の対象大会となり、選考の議論への影響は少なからず出てくる。

カナダ拠点の紀平梨花や米国で練習するアイスダンス村元哉中&高橋大輔組ら海外勢も、最終選考会の全日本選手権(22~26日、埼玉)に向けた帰国後の待機期間が、厳密に14日間となるか緩和されるか不透明だ。仮に紀平を指導するオーサー氏、村元&高橋組のズエワ・コーチらが同行予定でも認められず、日程的にも調整プランが狂う可能性はある。4年に1度の五輪を前にフィギュア界も当惑している。【木下淳】

 

▽北京五輪代表選考

(シングルは男女とも最大3枠を確保)

(1)全日本選手権(12月)優勝者が1人目

(2)2人目は全日本2、3位、全日本終了時点の国際スケート連盟(ISU)シーズンベストスコア上位3人に加えて、GPファイナル出場者上位2人となっていたが、日本連盟によると、基準変更の必要がある場合は理事会(15日)で決定

(3)最後に(2)で漏れた中からISU世界ランキング等を総合的に判断して3人目を決める。全日本出場は原則必須だが、過去に世界選手権3位以内など実績を持つ選手が、けが等でやむなく参加できない場合の救済措置もある。

 

○…ISUは大阪大会は中止になるが、代替開催地も含めて大会自体は行う可能性を示した。「開催が不可能になったことをISUは残念に思いますが、シーズン終了後に本大会を開催するための延期の可能性を検討し、できるだけ早く決定を下す予定です」とコメント。来春が候補になる。

 

▽オミクロン株による他競技の影響

○ボクシング 29日にさいたまスーパーアリーナでWBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(帝拳)が世界的スター選手のIBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との対戦を控える。前日計量から逆算すると、来週末ごろまでに来日可否の見通しを見極める必要がある。また大みそかには都内でWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(志成)がIBF世界同級王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との王座統一戦も予定。対戦相手の来日に向け、スポーツ庁などとの調整が続けられている。

○サッカー 女子日本代表なでしこジャパンは、オランダ遠征から帰国した1日から14日間の待機に。このため、4日のWEリーグ第11節全5試合は延期、今月予定の代表国内合宿は取りやめになった。