2大会ぶりの花園で、3大会ぶり2度目の頂点へ。

Bシード大阪桐蔭を引っ張るCTB河村ノエル主将(3年)の髪形の話になると、綾部正史監督(46)は笑った。

「どこに行っても“あの子、何かやったんですか?”と聞かれる。そのたびに“いや元々です”と言わんならん」。河村の見事な丸刈りは入学前、小阪中3年から。ラグビーの試合で友達とミスを連発し、反省の意味を込め、一緒に丸めた。以来ずっとだ。

河村は言う。「最初は切り(?)に行ってたんですけど、お母さんが“もう自分でやり”言うて」。公式戦前になると床に古新聞を広げ、買ってもらったマイバリカンで長さ3ミリに刈り込むのが恒例行事だ。そんな髪形同様、シンプルにラグビーに没頭してきた。

大阪桐蔭のフランカーとして、18年度大会で花園を制覇した3歳上の兄レイジと一緒に、八戸ノ里小1年からラグビーを始めた。「おっさんラガー」(河村)だった父正信さんにいつも、グラウンド脇からハッパを掛けられた。「いけよ!いかんか!」。タックルをためらい、逃げたらしかられた。それが原点。今では綾部監督が、CTB中村颯汰(3年)とともに「うちのハードタックラー」と評する主力となり、高校日本代表候補にも選ばれた。

大阪桐蔭はBシード10校中、東福岡、桐蔭学園、東海大大阪仰星のAシード勢に最も近い存在かもしれない。春の選抜は準々決勝で、近畿大会決勝で敗れた常翔学園にリベンジし、準決勝は桐蔭学園に12-17と惜敗した。直近の練習試合では再び常翔学園を破り、石見智翠館にも勝った。伝統のフィジカルは週2日だった筋トレを週3、4日に増やし、例年以上に強化してきた。

花園出場を逃した昨年度、大阪予選決勝で東海大仰星に敗れた先発メンバーが、現チームに10人も残る。河村は「みんな“僕らのせいで負けた”と思ってます。今年は先輩の分まで、と思ってます」と言う。悔しさを乗り越え、花園に帰って来た。優勝を目指し、丸刈りタックラーがチームをプレーで引っ張っていく。【加藤裕一】

◆河村ノエル(かわむら・のえる)2003年(平15)4月12日、東大阪市生まれ。八戸ノ里小1年から東大阪ラグビースクールに入る。小阪中ではCTB、NO8。目標は兄レイジ。名前は音楽好きな母順江(まさえ)さんが、兄は海外のロックバンドから、河村は日本の女性シンガーからつけた。175センチ、83キロ。