Aシードの東海大大阪仰星(大阪第2)が、4大会ぶり6度目の優勝を飾った。決勝初進出の国学院栃木を1トライに封じ込み、5トライを奪取。キック多用の堅実な試合運びで、36-5と快勝した。ファンの指摘で変わった湯浅大智監督(40)と、自立を促された選手の歯車がかみ合った。大会優勝6回は東福岡、天理(奈良)と並ぶ歴代4位。

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花園開幕の約2週間前、湯浅監督はテレビ番組にシビれた。将棋の藤井聡太4冠誕生を追ったNHKスペシャル。第2局で豊島竜王が投了した背景に「考えが同じや」と興奮した。「先の先のもっと先を読み、最善手を狙う」。

羽生善治氏、野村克也氏、日本ハムファイターズの初代オーナー大社義規氏…。いろんな生き様、本が好きで、ジャンルを問わず、ラグビーに落とし込むが、勝利至上主義ではない。

3年前からリーダー制を敷く。薄田主将は「チーム」を背負う。野中は「ゲーム」御池は「クラブ」他に「食事」「睡眠」「勉強」など。誰もが何かのリーダーを担う。「ラグビーエリートを育てるつもりはないです。選手権を目指すチームとクラブチームの両立。強化、普及、人間形成の中で、どう勝つか」。永遠のテーマへ。「仰星はそうあるべき」と声を強める。

花園で全都道府県代表出場が定着した平成以降、最多優勝監督は啓光学園の記虎敏和氏の5回。湯浅監督は40歳で4回となった。信条は「ひたむきさ」だ。「生徒には“この人と生きていきたい”と思われる人になってほしい」。

不惑の監督はこの日、優勝胴上げを拒否。生徒に「監督を胴上げせん文化を作ろうや」と呼びかけた。【加藤裕一】

◆湯浅大智(ゆあさ・だいち)1981年(昭56)9月8日、大阪市生まれ。中1からラグビーを始め99年度大会の東海大仰星(当時)初優勝時フランカー、主将。東海大卒後、母校で9年間コーチ。13年春から監督、花園出場8回で優勝4回。保健体育教諭。趣味は料理など。家族は妻と1男2女。