日本のエース、堀米雄斗(23=ミクシィ)が、日本のファンの前で2度目の優勝を果たした。予選を1位で通過した東京五輪金メダリストは、決勝で超絶な新技を連発。日本人ファンにスケボーの魅力を伝えるという願いを果たした。2位は池田大暉(15)、3位は白井空良(20)で日本勢がメダルを独占。3日間で延べ4万人を集めた「祭典」を締めくくった。

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小雨のスタジアムが、堀米の妙技に沸いた。決勝2本目、45秒のランの最後に新技「スイッチ・トレフリップ・リップスライド」を披露。メークするといつもは静かな男も興奮を隠さず。優勝を確信したのかボードを蹴り上げ、右手を突き上げた。

雨が強くなって3本目は中止。金メダルをかけられると「日本のみんなの前で新しいトリックができてよかった」と話し、「来てくれて、ありがとうございます」と1万7000人(主催者発表)の観客に感謝した。

世界のトッププロとして活躍し、東京五輪で初代王者についた。原動力となったのは「日本人にスケートの魅力を伝えたい」という思い。かつて話した「五輪は考えていない」が変わったのは、東京大会が多くの日本人に見てもらえる場だと思ったから。もっとも、日本人ファンで沸くはずの東京五輪は無観客。金メダルは手にしたが「寂しかった」と明かした。

東京五輪後は、ストリートでの撮影などに時間を割く一方、新技にも挑戦してきた。この日2本のランの最後は、ともに新技。「まだいくつかは用意している」。世界のトップに立っても、向上心は衰えない。

「仲間や観客と1つになれることがスケートボードの魅力」と話す。親友のスノーボード平野歩夢、格闘家の那須川天心をはじめ、大勢の日本人ファンに見守られて「夢の大会」で優勝。多くの日本人に応援され、喜びを分かち合えたことが、最高の金メダルだ。

「五輪後初の大会で、ファンの前でやりたいことができたことがうれしい」。日本のエースは最高の笑顔で言った。【荻島弘一】

◆スイッチ・トレフリップ・リップスライド スイッチスタンス(メインとは逆のスタンス。堀米の場合はメインが右足前なので、左足前)でトレフリップ(ボードを水平に回しながら縦に1回転させる)してレールに乗り、ボードで滑りおりる超高難度のトリック。