初代王者を懸けたラグビーのリーグワン決勝は29日、東京・国立競技場で行われる。27日はメンバーが発表され、埼玉(旧パナソニック)は過去公式戦3試合の出場にとどまるプロップ藤井大喜(24)が初先発。在籍2季目の“新顔”が、日本代表候補の稲垣啓太(31)、坂手淳史主将(28)とFW第1列を形成する。東京SG(旧サントリー)はニュージーランド代表FBダミアン・マッケンジー(27)らが先発し、昨季トップリーグ決勝のリベンジを目指す。

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ピッチで円陣を組み、埼玉が心を1つにした。熊谷市内で行われた今季最後の全体練習。仲間へ感謝を伝え合い、FWはセットプレーを確認した。同じプロップの稲垣、フッカー堀江ら経験豊富な先輩に囲まれ、大東大出身の藤井も調整を終了。携帯電話に目をやると、岩手・黒沢尻工高や大学の同期から、大量の祝福メッセージが届いていた。

「スクラムで押し込んで、少しでもチームを勝利に導ける働きをしたいです」

24日の朝、ディーンズ監督に初先発を告げられた。入団1年目の昨季は1試合、今季も2試合の途中出場のみ。チーム事情もあり、国立の決勝で巡ってきた大役だった。手足が震え、帰宅後も午後11時までサインを確認し続けた。大東大の先輩にあたるSH小山は「顔が死んでいた」と苦笑いしつつ「藤井の存在が世に知られてほしい」と期待した。自らを「小心者」と分析する藤井は「前半が終わって、歩けなくなってもいいぐらい出し切りたい」と地道な貢献を心に誓った。

相手のFW第1列は全員が日本代表経験者。初代王者へ、FW戦での優劣は大きな鍵を握る。「試合前の高ぶっている時はトイレに1回入って、1人の空間で落ち着くのがいい。決勝もこもって、落ち着いていきます」。初々しく埼玉の「3」を背負う。【松本航】

◆藤井大喜(ふじい・たいき)1998年(平10)1月4日、岩手県生まれ。中学まではバレーボールに打ち込み、黒沢尻工高で本格的にラグビーを始める。大東大時代にU20(20歳以下)日本代表などを経験。座右の銘は「一生懸命」。趣味は漫画、食べ歩き、ドライブ。今季は第8節大阪戦の後半10分、第15節東葛戦の同17分に途中出場。183センチ、114キロ。