B1秋田ノーザンハピネッツが躍進した。今季(21-22年)は31勝23敗で、クラブ史上最高の勝率5割7分4厘をマーク。勝率5割超えは初の快挙だった。東地区5位ながらワイルドカード2位でチャンピオンシップ(CS)に初出場。沖縄アリーナで13、14日に行われた琉球とのCS準々決勝は2連敗で敗退も、今後につながる大きな経験となった。日刊スポーツ東北版では「B1秋田ノーザンハピネッツの挑戦」と題して<1>今季の振り返り <2>新アリーナ構想-をテーマに前後編の連載をお届けします(新アリーナ構想編は近日掲載予定)。

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歴代最強の秋田だった。前田顕蔵ヘッドコーチ(HC、39)就任前の18-19年は勝率2割8分3厘、同氏がアシスタントコーチからHCに昇格した19-20年は同4割6分3厘、昨季(20-21年)は同4割7分5厘。今季は同5割7分4厘と3季連続で勝率を伸ばすとともに、CS初出場や強豪A東京に初の2連勝を飾るなどクラブ史を塗り替えてきた。特別指定選手時代を含めて秋田在籍6季目の中山拓哉主将(27)は言う。

「ディフェンスのところは毎年のように激しくやっていて、そこはあまり変わらないと思うんですが、今季はオフェンスの3P(3点シュート)が非常に良かったと思います」

中山主将が話すようにオフェンス面は3Pが光った。成功率はリーグ1位の37・8%で、ワースト2位だった昨季の31・8%から6%向上。その要因として2人のシューター加入が挙げられる。千葉Jから4季ぶりに復帰した田口成浩(32)はリーグ3位の成功率45・1%。ジョーダン・グリン(32)も同4位の同44・1%と高い数値を残した。

もう1人の主将でチーム最年長の古川孝敏(34)もオフェンス陣を引っ張った。レギュラーシーズン51試合に出場し、24試合で2桁得点。そのうち5試合で20得点以上を挙げ、昨年10月23日の群馬戦、3月26日の北海道戦ではBリーグでキャリアハイの30得点をマークした。前田HCが常々口にする「日本人が点を取ってほしい」を体現した。

チームカラーの激しいディフェンスも健在だった。全員がハードワークし、1試合平均の失点は昨季の79・88点から今季は75・70点と4点改善。ディフェンスリバウンドも昨季の1279本(59試合)から1352本(54試合)に増えた。アレックス・デイビス(30)が2季連続でブロック王に輝き、新戦力のコルトン・アイバーソン(32)は負傷で20試合欠場も、出場時は存在感を放ち、両助っ人がゴール下を支配した。

秋田はB1在籍5季目で初のCSだった。中山主将は「今回出場するまで『長かったな』というのが正直な気持ちです」。琉球との準々決勝第1戦は60-74、第2戦は56-77で敗退した。初戦は第4クオーター(Q)、2戦目は第3Qに、いずれも4点差まで詰め寄ったが「勝ちきれなかったのは僕たちの実力のなさ」と田口。「追う展開が続き、追い越せるところまで来て、そこで僕たちが追い越せなかったのが、シーズンの実力だなと思いましたね」。西地区王者・琉球との差を感じたという。

Bリーグが開示した昨季のB1チーム人件費(今季は未開示)で、秋田は3億500万円で20チーム中12位だった。A東京が9億2300万円で1位、千葉Jが8億9600万円で2位、宇都宮が6億700万円で3位、三河が5億2000万円で4位、琉球が4億9300万円で5位、川崎が4億9100万円で6位、名古屋Dが4億8600万円で7位、SR渋谷が4億5600万円で8位、広島が4億3600万円で9位、大阪が4億400万円で10位、島根が3億1400万円で11位が主な順位となっている。

今季CSに進出した8チームは、いずれも12位以内にランクイン。その中で人件費が一番低い秋田の躍進は、前田HCの下でチームが成熟した証しで、価値のあるものだった。【山田愛斗】