関西大学ラグビーで立命大を率いる鬼束竜太ヘッドコーチ(HC、49)が、一定の手応えをつかんだ。

3日に奈良・天理親里競技場であった春季トーナメントの3位決定戦。立命大は5-26で昨季リーグ2位の近大に敗れた。

後半には雷による中断もあった一戦は、ゴール前のラインアウトが安定せず、スクラムでも劣勢に立たされる場面があった。トライは後半開始直後にSH北村瞬太郎(3年=国学院栃木)が挙げた1本だけ。それでも鬼束HCは収穫を得たようだ。

「まだ落とし込みが足りていませんでしたが、粘り強くディフェンスができるようになっている。昨シーズンからは成長している」

昨年度の花園で優勝を経験したWTB御池蓮二(東海大大阪仰星)と、NO8島正輝(大分舞鶴)の1年生2人を先発で起用した。控えにも5人(8人中)の1年生を抜てきする。その理由を問われると、こう答えた。

「試しに使っているわけではなく、実力でポジションを取っています。NO8の島はケガあがり。11番の御池は勝つために練習に取り組んでいる。(上級生が)見習うべきものがある。中心とまではいかなくても、それだけの選手になっています」

近大戦の先発は4年が4人、3年が6人、2年が3人、1年が2人。来季が楽しみなチームということは間違いなさそうだ。

準々決勝(6月5日)は、鬼束HCの母校でもある同大との対戦だった。57-14の圧勝。確かな自信をつかんだこの試合には、フランカー榎本匡志(大阪桐蔭)も含め3人の1年生を先発させている。控えにも1年生が4人。対する同大は23人のメンバーに1年生は1人もいなかった。

振り返れば、93年度の全国大学選手権は関西から同大と京産大の2校が4強入り。特に同大のPGを狙わない“イケイケラグビー”は話題になった。優勝する明大に準決勝で17-27の接戦を演じる。

その中心に鬼束HCはいた。

在学中に日本代表にも選出される。堀越、村田、永友。SHはそうそうたるメンバーがそろっていた時代だった。

自身が同大では1年生から試合に絡んでいたこともあり、指導者になってからも積極的に起用しているのかも知れない。昨季、立命大はリーグ5位。関西リーグ制覇は13年度、全国大学選手権は18年度を最後に遠ざかる。今春も同大に勝ちはしたが、準決勝は京産大に19-78で完敗。ただ、復活への道筋は見えている。

「いい選手が立命に来てくれている。私が昨年8月に入った(HC就任)時、既に今の1年生が入ることは決まっていました。コロナの影響で、関東にリクルートがいかず、逆に関西にいい選手が残った。将来に向けて楽しみな要素が多いんです」

春季トーナメントは京産大と天理大が両校優勝。秋もこの2校が軸になる。それを追うのが近大と立命大、春は苦戦が続く同大か。

伸び盛りの1年生がさらに成長すれば、立命大は「ダークホース」になり得る存在だ。