21年東京パラリンピック車いすテニス男子シングルス金メダルで、世界王者の国枝慎吾(38=ユニクロ)が、現役続行に意欲を見せた。21日、都内でグローバルアンバサダーを務めるユニクロの社会貢献の一環で街中清掃活動に参加。拾ったゴミの量を競う活動に「スポーツ感覚。楽しみながらやれるのがいい」と話した。

10日に終了したウィンブルドンで初優勝。16年にウィンブルドンでシングルスの種目が採用されて以来、4大大会の全シングルスに加え、パラリンピックも制する生涯ゴールデンスラムを男子史上初めて達成。「(芝で)キャリアベストのプレーができていた。取るなら今年しかない」と強い気持ちで奪い取った。

車いすテニスの人生で、全てのタイトルのピースは埋まった。21年9月に幕を下ろした東京パラリンピック、直後の全米が終わった時には、「完全な燃え尽き症候群。いつ辞めようかと考えていた」。全くラケットを持つ意欲もわかず、暗中模索を繰り返した。

しかし、今の気持ちは「いつでも辞める準備はできた」だ。引退という意味ではなく、ウィンブルドン初制覇の喜びに浸る前向きな感情だ。パラリンピック後のモヤモヤした後ろ向きな感情ではなく、「辞めることに悔いはない」状態だからこそ、気持ちははっきりしている。

現在は「自分のパフォーマンスをどれだけ上げられるか」が、大きなモチベーションだ。タイトルのことを考えなくていいだけに、徹底的にサーブやリターンの改善に取り組める。「今はもう練習も始めている」と、パラリンピック後とは大きく違っている。

9月には全米(ニューヨーク)がある。優勝すれば、今度は、男子シングルス史上初の年間4大大会全制覇となる。そして、10月には楽天ジャパンオープン(有明テニスの森公園)で、19年同大会以来、3年ぶりに日本の観客の前でプレーする予定。「特に日本のお客さんの前でプレーできるのは大きい」。まだまだモチベーションは健在。“引退”の2文字は、もう少し後になりそうだ。【吉松忠弘】