4大陸女王の三原舞依(22=シスメックス)が首位発進した。3回転フリップに乱れがあったが、残りのジャンプをまとめ、3つのスピンとステップは最高のレベル4で69・16点を記録した。2月の北京五輪は惜しくも逃したが、新たなシーズンに弾みをつけた。五輪代表の河辺愛菜(愛知・中京大中京高)は66・58点で2位。世界女王の坂本花織(シスメックス)は学校行事への参加などによる調整不足で出場を見送った。

    ◇    ◇    ◇

両拳を振り上げ、三原がニッコリと笑った。立ち上がる観客を見ると、感謝を伝えるように手を振った。「(自分の)バナーを振ってくださっていて、すっごいうれしい気持ちでプログラムを滑りきることができた。背中を押してくださってうれしいです」。今季初戦の首位発進。拍手に包まれる感覚が心地よかった。

繊細かつ大胆に、新しい演目を磨き上げている。透明感のある青の衣装で演じる「戦場のメリークリスマス」。前半の3回転フリップこそ着氷でこらえたが、得点源のルッツ-トーループの連続3回転で1・57点の加点を導いた。スピン、ステップは取りこぼしがなく「表現の中にメリハリをつける。最後まで滑り終えたら涙ぐむような感じ」と感情を込めて滑りきった。

言葉に表せない悔しさを何度も味わってきた。昨年12月。北京五輪代表選考会の全日本選手権で4位にとどまった。3位で五輪切符をつかんだ河辺とは、わずか2・79点差。最新の世界ランクは日本勢2番手の10位と国際大会の実績も豊富だが、夢舞台は遠かった。

新シーズン前の5月、1人で向かったのはカナダ・トロントだった。約3週間のスケート留学。自炊をし、公共交通機関でリンクに通い、学業面でも講義を受けた。五輪2連覇の羽生結弦さんのコーチとして知られる「クリケットクラブ」のブライアン・オーサー氏らから、スケーティングの重心のかけ方を習った。「1人で最初から最後まで全部初めてやってみた。体力面でも、精神的にも成長できた」。新たな挑戦で、心身のたくましさは増した。

わずか3季前、体調不良で全ての競技会を欠場した。この春に甲南大大学院へ進学し、今は「たくさん滑った後も、すぐに元気になることができる」と笑う。

「まだまだ滑っているうちに『もうちょっとこうしたい』というのがある。今回学んだことを、次に生かしたいです」

決しておごらず、己の道を信じて進む。【松本航】

◆三原舞依(みはら・まい)1999年(平11)8月22日、神戸市生まれ。小2で競技を始める。芦屋高-甲南大-甲南大大学院。4大陸選手権は優勝2度(17、22年)、2位が1度(18年)、3位が1度(19年)。世界選手権は17年5位。世界女王の坂本花織と同じ中野園子コーチに師事。趣味はけん玉。158センチ。

◆げんさんサマーカップ 滋賀県スケート連盟主催の地方競技会。大津市で牛肉などを販売する元三フード株式会社がサポートし、各カテゴリー優勝者には近江牛と同社のゆるキャラ「げんちゃん」のぬいぐるみが贈られる。シーズンが本格化する秋に向けて、多くのトップ選手も現状の確認などを目的にエントリーする