GPシリーズ初出場の渡辺倫果(20=法政大)が手応えをにじませた。

ステップアウトとなったが、冒頭でトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)に挑んで62・78点で6位発進。その後にシステムエラーで後半のジャンプの得点が修正されて63・27点となり、67・90点で首位のシーザス(カナダ)とは4・63点差につけた。スピン3つとステップで最高のレベル4とし「初めてのGPシリーズでうまくまとめることができた。今日は楽しみな気持ちと、その中で良い緊張感を持ってできた。(3回転半は)やらない選択肢はなかったです。頑張りました!」とほほえんだ。

「エモいですね」。幼少期からテレビで憧れていた舞台への初参戦の場所は、カナダになった。中学校3年から高校生活を過ごしていた場所だった。運命的なものを感じて、気持ちが高ぶった。

「2年ぶりです。1回入国拒否をされちゃったんで」

新型コロナウイルスの影響で日本に帰国を余儀なくされ、再び渡航したカナダの空港で、入国を認められなかった。

その後は日本を拠点にする道を選び、地道な努力を続けてきた。9月のロンバルディア杯で優勝し、一気に注目を集める存在となった。そして、再び日本代表としてカナダへ。

「出発の前日まで出国できない状態で。この1週間はもう生きた心地がしなかったので。まあ入国できただけでも本当に感謝感激です」

過去の入国拒否の関係で、気をもむ時間は長かったが、それだけに試合にかける思いも強く持っていた。

GPシリーズは出場なしの予定が、NHK杯も含めて2戦出場が決まっている。29日(日本時間30日)のフリーへ「明日も気を引き締めてできたら」と言い切った。次戦につながる流れも、第2の故郷でつかみたい。(ミシソーガ=阿部健吾)