【トリノ(イタリア)=松本航】ショートプログラム(SP)首位の宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が初優勝を飾った。フリー自己最高の204・47点を記録し、合計304・46点。過去2位が2度、3位が2度の舞台で、ついに頂点に立った。ジュニア2つ、シニア4つの主要国際大会を制する「スーパースラム」も、残すは五輪金メダルとなった。SP2位山本草太(中京大)が2位、マリニン(米国)が3位。佐藤駿(明大)は4位、三浦佳生(オリエンタルバイオ/目黒日大高)は5位となった。

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得点を見た宇野が、思わず拳を振った。トリノの地で大歓声に包まれ「とてもうれしく思います。本当にこの結果というのは、今日まで練習してきたことがつながった」と笑った。3月の世界選手権に続き、シニア主要大会のタイトルで準備の充実ぶりを証明した。

緊張はなかった。シリーズ2戦上位6人による大舞台。18歳のマリニンが大技の4回転半を決め、直前には国内拠点の中京大で練習をともにする山本が完成度の高い演技を披露した。「それで緊張して固まってしまうなら『今後は見なくていいかな』と思ったけれど、あまり変わらなかった。緊張していなかった」。あえてモニターで見つめ、最終滑走のリンクに立った。

練習は裏切らなかった。冒頭からループ、サルコー、フリップと4回転3本を成功。演技後半のトーループ2本も降りきった。演技構成点は2位に14・26点差をつけ、スケート技術など3項目全てで10点満点の9点台をそろえた。17歳での初出場から7年。男子最年長の立場で貫禄を示したが「僕が今求めているのは、練習以上ではなく、練習してきたことをしっかり出すこと。若い世代に負けないように頑張っていきたい」とスタンスは変わらない。

ひと息つく間もなく全日本選手権(22日開幕、大阪)が控え、自国開催で2連覇が懸かる世界選手権(22年3月、さいたまスーパーアリーナ)の切符を争う。将来について「どれぐらいスケートを続けるか、僕も分からない」としつつ、ランビエル・コーチが06年トリノ五輪で銀メダルを獲得した会場に思いを残した。

「ステファンの『第2の故郷』だと(聞いた)。(同じイタリアのミラノ・コルティナダンペッツォ五輪が開かれる)4年後に何をしているか分からないけれど、またこの地でいい成績を残すと、ステファンもうれしいと思う。また来たいと思います」

17日には25歳の誕生日を迎える。成熟しつつある宇野の向上心に衰えはない。

◆スーパースラム ジュニアの世界選手権とGPファイナル、シニアの五輪、世界選手権、GPファイナルに4大陸(欧州の選手は欧州選手権)を加えた国際大会主要6冠の完全制覇を指す。シングルでは女子の金妍兒(キム・ヨナ=韓国)とアリーナ・ザギトワ(ロシア)が達成。男子は20年に羽生結弦が達成した。