男子は駿台学園(東京)が6年ぶり2度目の日本一に輝いた。前回準優勝の鎮西(熊本)に0-2とリードされたが、第3セット以降を3連続で奪取し、逆転した。最優秀選手賞は、駿台学園の佐藤遥斗(3年)が受賞した。

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第2セット終了時点で駿台学園の0-2。思うように得点を奪えないエース佐藤は下を向きかけた。それを察したセッター吉田竜也(3年)からゲキが飛ぶ。「すぐ、次!」。リベロ布台聖(ふだい・しょう=3年)からは「1プレーが雑だぞ!」と厳しい指摘を受けた。「そこで気持ちを切り替えられました」。大逆転Vのきっかけは“主将たち”の声だった。

およそ2カ月前。佐藤はもがいていた。昨年10月の国体で決勝進出を逃し、チームも、自身のプレーもうまくいかない。「自分への負担が大きかったんです」。梅川大介監督に「どうすればチームがまとまりますか?」と電話で相談することもあった。

同学年の仲間たちが、苦心する主将を見過ごすことはなかった。佐藤がプレーに集中できるよう、吉田がチームの主将を引き受けた。ゲーム中のコート内での主将の役割は、布台も担ってくれた。「吉田も新主将をしっかりやってくれて、負担も軽減されました」。1人で抱え込んでいたエースは、仲間を頼り、サポートを受けることで、輝きを取り戻した。

主将はもう1人いる。18人のメンバー登録から外れた3年生の竜神輝季(りゅうじん・てるき)は今大会もサポート役に徹してくれた。洗濯に出かけたり、栄養補給のプロテインを用意してくれたりした。佐藤は「竜神が中心となって、支えてくれました」。“背番号のない主将”へ恩返ししたいと覚悟が宿った。

劣勢となっても、頼もしかった主将たちの姿。勇気づけられたエースはチーム最多36得点で応えた。優勝の瞬間は、自然と涙が流れた。仲間に目をやると、吉田も、竜神も思いが込み上げていた。「フロアの18人、サポートメンバー、チーム全員で優勝をつかむことができました」。信頼して託すことで差し込んだ光が、日本一のチーム全員を照らしていた。【藤塚大輔】

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