「かなだい」こと村元哉中(30)高橋大輔(37)組(関大KFSC)がFDで自己記録となる115.55点をマークし、合計188.87点の11位で、2度目の世界選手権を終えた。結成3季目、万感の演技で涙を流した。

フリーの演目は「オペラ座の怪人」。高橋が日本男子シングル最高位(当時)の銀メダルを獲得した07年大会で演じたプログラムだった。母国開催は16年ぶりの参戦、しかもシングルではなくアイスダンスで臨んだ。

高橋がかぶっている仮面を村元が剥ぎ取る印象的な振り付けから演技を始めた。RDではミスがあったツイズルも息ぴったり。2人で世界観を作り上げていった。高橋の力強いリフトも光った。演技を終えると、高橋が肩をふるわせて泣いた。2人で抱き合うと、村元も思いが込み上げた。総立ちの満員の観衆の拍手に包まれ、「やっとできた!」と2人で声をかけあった。

高橋 素直にうれしい。本当に。ミスなく演技をすることができて、最後までオペラ座の世界観に入り込んで、エネルギーが切れずに、演技の途中ぐらいから「いったれ!」っていう感覚で。母国開催でプレッシャーもすごく大きかったけれど、納得のいく演技ができてうれしく思います!

村元 最初は緊張感あったけれど、コレオステップからオペラ座の世界観に入った。最後のダイアゴナルの途中かな、お互い顔を見て笑っていたのかな。「いけるぞ!」みたいな。本当にミスなく終えられてすごくうれしいです!

取材エリアでは互いの声が弾んだ。2人でやり抜いた達成感が体を満たしていた。

直前の5分間練習、大観衆の声援、「頑張れ!」の声に気持ちは引き締まった。ただ、演技を開始してからは、周囲の声は耳に入らなくなった。

村元 2人だけの世界に入り込んでいたので、見守られているなと感じたんですけど、終わって最後のポーズで、お客さんが見えました。

「オペラ座の怪人」の世界を一緒に作り上げた。

高橋は3季目の終わりに近づき、あらためてシングルとアイスダンスの違いに触れた。

高橋 自分たちでも満足のいく演技ができた時に、本当に1人で滑るより、喜びが2倍、3倍って。こうやって一緒に物事をこう作り上げていくって、こういうことなんだなって。改めて今回すごく感じられて。

村元がいたから、この舞台での歓喜は数倍になった。それが30代半ばでの転向、そこからの努力のご褒美だった。