B1仙台89ERSを振り返る-。藤田弘輝ヘッドコーチ(HC=37)のインタビュー第2回は、苦戦したシーズンを終始支えてくれたブースターへの感謝と、仙台89ERSの戦いを通してHCがブースターに届けたかった思いに迫りました。【取材・構成=濱本神威】

  ◇  ◇  ◇

「19勝を挙げたことは『めっちゃすごい』と思います」。7日のシーズン最終、群馬戦を終えた藤田HCはそう振り返った。19勝41敗の東地区最下位。だが、この“19勝”には同地区首位・千葉Jの25連勝を阻んだ勝利や中地区首位・川崎から奪った勝利など、価値ある勝利が多く含まれる。

試合後はファン感謝祭に参加。「今、後ろに立っているこの仲間とみなさんとともに、良いときや特に悪いときに一緒に戦えたこと。この仲間と41回負けて、19回勝利して、今シーズンを戦い抜いたことを本当に誇らしく思います」とあいさつ。そのときの心境を「なんか複雑でした。19勝『しか』って思っている人もいるのかなって…。僕はけっこう繊細なので(そう)思ってしまう」と明かした。その上で「でも、自分たちはどんなときもベストを尽くしたという自信がある」と胸を張り、「ブースターのみなさんはクラブに取って酸素のようなもので、なくてはならない存在。強豪チームのように勝ち試合をポンポン見せることはできませんでしたが、それでも我慢強く一緒に戦ってくれて感謝の気持ちでいっぱい」と黄援に感謝した。

「試合を見にきたみなさんに『明日も頑張ろう』という活力を与える、見ている人たちが勇気をもらえるチームにしていきたい」。藤田HCがよく口にする、プロとしての誇りを持って戦う決意がこもった言葉だ。その決意が6、7日群馬戦で結実した。第1戦は延長の末、85-91で競り負けたが、第2戦は89ERSらしい堅守を発揮して84-67で完勝。「最終戦の勝利が活力と勇気をブースターに与えたのでは?」と問うと、普段とは違う柔和な表情で「そうですね…(勇気を与えられた)かなぁ…」と語り、こう続けた。「人生と一緒だと思います。毎日勝っていればいいですが、世界はそんなに甘くないし、人生は勝つときよりも負けるときの方が多い。それをどう乗り越え、どう学び、どうファイトし続けるかだと思います。ファイトし続けることがいかに大事かを、子どもたちや次の世代に少しでも伝わればいいなと思います」

「どう乗り越え、どう学び、どうファイトし続けるか」。強豪ぞろいのB1で、その姿勢を体現してきた仙台89ERS。来季も指揮を執る藤田HCの下でバスケットを通して、地域とブースターに活力を届けていく。【次回に続く】