【プラハ=藤塚大輔】今大会限りで現役を引退する坂本花織(25=シスメックス)が、2年ぶり4度目の優勝を飾った。

ショートプログラム(SP)首位で迎えたフリーで、自己ベストの158・97点。合計も22年世界選手権で記録した従来の自己最高を更新する238・28点をマークした。浅田真央の3度を上回り、全種目を通じて日本人単独最多となる4度目制覇で有終の美を飾った。

 ◇   ◇   ◇

笑い泣きだった。最後のポーズを解くと、自然と涙があふれた。現役最終戦で金メダル。4歳から二人三脚で歩んできた中野園子コーチと喜び合った。「晴れやかな気持ちで競技から退ける。すごく幸せ」。心の底からかみしめた。

「私のために滑ってね」。演技直前に中野コーチから声をかけられた。師は「自分のためにはなかなか滑れないけど、人のためには滑れる子」と思いを込めた。坂本は「それやったらできる気がする」と受け取った。振り返れば、幼少期も同じだった。中野コーチから「私のためにダブルアクセルを跳んでね」と言われていた日々を思い返した。

2月のミラノ・コルティナ五輪の団体は仲間のために滑った。悲願の金メダルへ結束を深めるべく、自らペンを持ち込み、うちわに寄せ書きをしようと提案。鍵山が男子SPで1位になると、直後に練習リンクの裏で「マジで熱い」と涙した。坂本も自ら志願したSP、フリーでともに1位。金の米国と1ポイント差の銀メダルに貢献した。「自分のためもあるけれど、みんなのためが大きかった。そういう考え方の方が向いている」と気が付いた。

個人銀メダルだった五輪から1カ月。かねて「五輪が最後」と決めていたが「もうちょっとできたはず」と出場を決めた。その集大成の舞台で中野コーチから「私のために」と伝えられると、肩の力が抜けた。「これまでの世界選手権で一番緊張しなかった。100%、人のために滑った」。荘厳な「愛の讃歌」に乗せ、1つずつ技を決める。五輪でミスがあった3回転の連続ジャンプも成功。自己ベストで締め、1万人超の観衆の喝采を浴びた。

21年間の歩みに思いをはせ「毎シーズン新しいプログラムを作って、発揮できるように調子を上げて、試合で結果を残す。この過程はすごく青春だった」と笑った。

今後は中野コーチのもとで指導者に転身し、まずは競技を始めたての年代を担当する。「自分は誰かのためと思えば強い」。これからは未来のフィギュア界と子どもたちのために、力を尽くす。