ロンドン五輪の競泳男子400メートル個人メドレー銅メダリスト萩野公介(18=御幸ケ原SS、栃木・作新学院高3年)に、世界一の米国から獲得オファーが届いていることが3日までに分かった。複数の情報筋によると、五輪で金16個を含め最多31個のメダルに輝いた米国の男子代表グレッグ・トロイ・ヘッドコーチ(61)から正式な申し出があった。国内の大学進学で固まっていた進路だが、結論を今月下旬まで先延ばし。リオ五輪を見据え、慎重に協議することになった。

 日本競泳界の宝が、世界一の米国から認められた。萩野は五輪男子400メートル個人メドレーで「怪物」フェルプスを破り、4分8秒94の日本記録で銅メダルを獲得。この泳ぎに目を付けたのが、米国男子ヘッドコーチのトロイ氏だった。

 トロイ氏は名門フロリダ大に拠点を置き、ライアン・ロクテを指導する。「アイアンマン・トレーニング」という独自の筋力練習によって、ロクテは肉体改造に成功。昨年の世界選手権で5冠に輝くと、五輪でも金2、銀2、銅1個を獲得するなど、世界的なスター選手へと育て上げた。その名伯楽が萩野の将来性にほれ込み、直々に獲得を申し出たという。4年後のリオで32歳となるロクテの現役続行は微妙とあって、次は21歳となる萩野を頂点へと導きたい意向のようだ。

 高校3年生の萩野の進路は、五輪前までは国内の大学で固まっていた。数多くの有力大学から勧誘され、日本代表ヘッドコーチ平井伯昌氏の指導が決まっている東洋大への進学が有力視されていた。だが今回の申し出もあり、現在は白紙の状態。さらに米国からは非公式に、ほかにも獲得を打診の声があるという。

 当初は今月上旬にも進路が決まるはずだったが、結論は先延ばし。岐阜国体(15~17日)を経て、今月末まで慎重に協議することになった。学業も優秀な萩野は、海外の遺産巡りが夢。また、北島康介がロサンゼルスを拠点に活動し、入江陵介もリオを目指して海外留学することを表明。そんな有力選手たちの取り組みが刺激にもなっている。

 ただ、過去に高校卒業後に米国へ渡った有力選手のケースは見当たらない。生活環境や練習内容が大きく異なるため、来春の渡米についてはリスクを懸念する声も強い。萩野は先週行われたジュニア・オリンピック杯の際、進路について問われると「学業があるので、両親とじっくり話し合いたい」。日米どちらを選択するのか。18歳の大器が自らの未来に揺れている。

 ◆萩野公介(はぎの・こうすけ)1994年(平6)8月15日生まれ、栃木・小山市出身。羽川西小1年夏に父の転勤に伴い、名古屋市・御器所(ごきそ)小へ転校。東海イトマン鯱(しゃち)で頭角を現し、3年春に小山市へ戻ると宇都宮市の御幸ケ原SS入り。作新学院中-作新学院高3年。ロンドン五輪は400メートル個人メドレーで銅に輝き、男子高校生選手としては56年ぶりのメダリスト。200メートルは5位。175センチ、70キロ。家族は父洋一さん、母貴子さん。

 ◆グレッグ・トロイ

 1950年12月19日、米国ペンシルベニア州出身。テキサス・キリスト教大卒。27歳から競泳指導者として活動開始。96年アトランタ五輪は米国代表アシスタントコーチ。98年からフロリダ大のヘッドコーチに就任。米国水連選定による02、04年最優秀男子コーチ、10年最優秀女子コーチ。10年には米コーチ協会の年間最優秀コーチも受賞。08年北京五輪は米国代表アシスタントコーチ、ロンドン五輪は同ヘッドコーチ。