80万人分の願い、集まりました-。20年五輪からレスリングが除外対象競技となったことを受けて発足した「レスリングを五輪競技に復活させる会」は2日、都内で会見を開き、2月末から国内で実施してきた署名の数が82万1342人に達したと発表した。目標の10万人を大きく超え、出席したロンドン五輪金メダルの吉田沙保里(30=ALSOK)らも驚きの結果となった。今後は国際レスリング連盟(FILA)を通じ、スイスにある国際オリンピック委員会(IOC)本部に署名を届ける。

 約2カ月間の呼び掛けの結晶は、誰もが驚く人数になった。読み上げられた数字は「82万1342」。国内の競技人口は約9000人、世界でも約100万人といわれるレスリングだけに「数字を今日聞いて、本当にビックリしました」と五輪3連覇の吉田。ロンドン五輪で男子唯一の金メダルの米満も「こんなに集まると思っていなかった」と目を丸くしていた。

 都道府県の人口ランク(10年国勢調査)で言えば、第43位の福井県の80万6314人を超え、第42位の佐賀県の84万9788人に迫る。街頭で、大会で、学校で、とにかく草の根的に協力を求めてきた結果だ。小学生大会や、練習拠点である至学館大などで集めた吉田は、「『復活を願っています』など、本当に温かい言葉を頂いた。ありがたかった」と振り返った。

 レスリングが五輪から外される可能性が浮上したのは2月12日。IOC理事会で20年大会に実施する26競技中25競技が選定され、レスリングが外された。今後は他7つの候補競技と競い、9月のIOC総会で1競技が決まる。お家芸と言えるほどメダルを量産してきた日本。復活残留にかける思いが列島を駆け巡り、多くの賛同者が集まった。

 日本レスリング協会の福田会長は、「IOC本部に届けたい」と署名の行き先を決めた。同じくスイスに本部があるFILA経由で、郵送するという。法的拘束力はないが、数の力で訴える。「思い」は「重く」もあり、協会関係者が用紙を体重計で小分けにして計測したところ、実に205・9キロ。日本郵便によれば、スイスまでの郵送代は約25万円にもなる。

 候補を絞り込む5月のIOC理事会(ロシア)に派遣される吉田も「英語のプレゼンなどもある。頑張ってアピールしたい」と決意をあらたに。署名活動は現在も続行中で、100万人にも届く気配。この勢い、思いを、日本から世界に伝える。【阿部健吾】

 ◆署名の数

 2カ月間で80万人を超える数字は、世界的にみても多いと言えそうだ。最近では銃規制に関する米国のホワイトハウス公式陳情サイトが話題に。昨年12月にコネティカット州で起きた銃乱射事件後に、銃規制を訴える陳情がなされ、3日間では過去最多の約16万人を集めた。数で言えば、北朝鮮の拉致被害者に関する「救う会」による早期救出を求める署名が、97年から今年4月までの累計で1000万人を超える数を集めている。