日本フェンシング協会は6日までに、過激派「イスラム国」による邦人人質事件を踏まえ、海外遠征中の選手らに日本代表のジャージーの着用を禁止する通達を出した。イスラム国が今後も日本人を標的とすると予告している点を重視し、ジャージーやバッグなどに付いている「日の丸」を隠すことが狙い。ドイツ遠征中の08年北京五輪フルーレ個人銀メダルの太田雄貴(29)ら海外遠征中の選手約20人に連絡したという。

 日本フェンシング協会は、中東以外でも安全対策に万全を期すことになった。協会関係者はこの日、すでに海外遠征中の選手、スタッフに注意喚起したと明かし、「『日の丸が見える日本代表のジャージーは着るな』『用具などの日の丸も見えないように隠せ』と、大会に参加している選手たちにも気をつけさせています」と話した。

 現在、協会から海外に派遣されている選手、スタッフは約20人いる。太田らが出場する男子フルーレのW杯ドイツ大会と、女子フルーレのW杯アルジェリア大会が10日まで。米国で強化合宿中の選手もいる。イスラム国が日本人を標的にすると予告しており、標的になるリスクを減らすため、ジャージーなどの「日の丸」を隠すよう求めた。

 26日から3月9日まではジュニア・カデ世代のアジア選手権が、中東のアラブ首長国連邦(UAE)で開催される。中学、高校、大学の選手43人とスタッフ14人を派遣予定だが、日本協会の関係者は「週明けまでに結論を出したい。親御さんの心配なども加味して考えたい」と、派遣中止も検討しているという。

 前日5日には日本卓球協会が中東2大会への選手派遣を中止すると発表し、同じような動きは各競技団体に広がっている。日本レスリング協会は、イランで2月11、12日に行われるタクティ杯への選手派遣を中止。日本クレー射撃協会は3月下旬にW杯UAE大会の選手派遣について中止を含めて近く協議する。このまま海外遠征の中止などが続けば、16年リオデジャネイロ五輪の強化などに影響が及びかねない。【鎌田直秀】