八戸学院大(青森)女子ラグビー部が、東北女子ラグビー強化の拠点となる。17年春に東北初の女子ラグビー部として創設。5人だった部員に、今春2人が加入してセブンズメンバーがそろった。今後は単独チームでの大会出場だけでなく、将来的には女子7人制ラグビー国内最高峰「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」参戦が目標。ラグビー教室などの地域貢献活動にも励みながら飛躍に挑む。【取材・構成=鎌田直秀】
強く、たくましく、美しく! 八戸学院大女子ラグビー部が、チーム名「レッドシャークス」のごとく、ラグビー界の大海原を泳ぎ始めた。主将としてチームを支える鈴木佳寿音(かずね、2年)は「5人から7人に増えて、練習の幅は広がってきた。人数も増えるように、私たちが築いていきたい。卒業するまでには太陽生命に出場することが目標です」。
現在も男子ラグビーとの合同練習も多いが、女子だけで連係確認や体力向上に努める時間も増えてきた。ボールを使う練習も2対1や3対2でしか出来なかったが、7人になるとバリエーションも増える。週2回は筋力強化を中心とした午前7時からの早朝練習も継続している。
成果も少しずつ現れてきている。昨年は日体大との合同チームで初参加した「ウィメンズカレッジセブンズ」だが、今夏の同大会ではクラブチーム所属の同年代助っ人を含む“単独”チームで参戦。九州選抜に勝利するなど6位と健闘した。昨年は秋田県選抜で大島璃来(2年)が国体出場。今秋の福井国体では7人中5人が青森県選抜の一員として選出され、7位と奮闘した。
全員が先発出場を果たし、新潟県選抜から勝利も挙げた。1年生ながら活躍した山田優希美は「東北で通用するプレーも、国体では通じずにレベルの差を感じた。もっと上を見ていかないといけない気持ちになれた。全国レベルを知れる良い機会でしたし、勝つためには基礎から作り上げていかないと」と収穫も得た。
競技転向組も大きな成長曲線を描いている。むつ工(青森)で砲丸投げなどの投てき競技の県優勝経験もある山形詩織(2年)は、高卒後に就職も考えていたが、スポーツ学の勉強を志し入学。「最初は怖くて、試合でも『命日、命日』と言って走っていた」と笑うが、今ではパワーとスピードを生かしてトライを量産する得点源だ。
熊谷彩夏(2年)も入学当時を振り返り「転んでもケガしても『大丈夫、大丈夫』って言って、すぐ始めるんですよ。私なんて『足、ついてる?』って聞いていた感じですよ。みんな神経がおかしいんじゃないかと思った」と苦笑いする。木造(青森)時代に陸上7種競技で鍛え、東北大会女王の逸材。4710点の自己記録は今でも青森県最高記録として残る。細身ながら体幹の強さと運動能力の高さを発揮。今秋には太陽生命セブンズシリーズに出場チーム以外から選抜される「チャレンジチーム」メンバーとして、ひとあし早く大舞台を体感した。
東北女子ラグビーの普及や、女子学生増加を目的に創部した。八戸少年ラグビースクールでコーチを務める父を持つ田端ひかる(2年)は「土台がまったくないところから始まったので正直心配だったが、目標もどんどん出来て楽しい」。他部と合同の女子寮も新築され、スポンサー企業からの食材提供なども受けている。部員らも栄養学講習会や、幼稚園や保育園などのラグビー教室、国際交流活動にも積極的参加。工藤祐太郎監督(32)は「女子の指導者が、まだまだ少ない。増えていかないと底辺拡大につながらない。選手はもちろん、技術も知識も得た指導者も八戸から数多く生まれてほしい」と発展拠点としての役割を期待する。
ケガ人などの影響もあって、7人同時に試合出場したことは、まだ1度もない。来年4月にはラグビー経験のある3人が入学予定。他競技経験者にも門戸を開き続ける。7人制の大会には最低10人、理想は12人。右膝前十字靱帯(じんたい)断裂から復帰した佐藤真琴(1年)も「男子のスポーツというイメージを変えたい」と意欲を燃やす。今冬、雪上でも練習を積み、八戸から全国舞台へ。どんな強敵にも食らいついてみせる。