ジャパン戦士よ、もっと嫉妬させてくれ-。ラグビー元日本代表で15年W杯南アフリカ戦の歴史的勝利に貢献したフッカー木津武士(31=日野)が、4年前の再現を目指す代表にエールを送った。現役選手としての複雑な心境を隠すことなく口にし、初の8強へ進んだメンバーを称賛。さらなる快進撃に期待を込めた。

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木津の言葉は正直だ。自国開催のW杯。日本代表の快進撃は現役選手として少し複雑だが、ラグビーを愛する仲間としてうれしい。

「15年W杯メンバーの僕らが嫉妬するぐらい、今の日本代表ってすごいんです。4連勝。たった4年で、南アフリカに勝ったことが上書きされたみたい。口に出す、出さないは置いておいて、みんな『うらやましいな』『すごいな』って、嫉妬していると思います」

フランカーのリーチは東海大時代の同期。2季前まで在籍した神戸製鋼FB山中ら、戦友が代表の主力を担う。16年11月、ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)初陣のアルゼンチン戦に名を連ねた木津も、2大会連続W杯を目指す1人だった。

15年9月19日、英ブライトン。相手はW杯優勝2度を誇る南アフリカだった。

「後付けでみんな『勝てると思っていた』と言っているけれど、正直、僕は勝てると思っていなかった」

ベンチで見た前半を10-12で折り返し、しつこい防御が通用する展開に「何かある!」と初めて思った。同点の後半29分に出場。3点を追う最終盤、敵陣深くでペナルティーを得た。

リーチ 武士、スクラムの感覚どう?

木津 スクラムでいこう!

引き分けでは何も変わらない-。その意思が後半42分、WTBヘスケスの逆転トライを呼んだ。直前には先発のリーチが何度も起き上がり、執念でボールを前に運ぶ姿を見た。究極の局面で力になった「自信」。今の代表は試合前から、その武器があると分析する。

「自分たちのラグビーを80分やりきれば、勝てるという自信がある。それは絶対に試合より、しんどい練習から来る自信だと思う」

今大会中、スポーツバーで男性に「お兄さん、ラグビーしてるようなガタイですね」と声をかけられた。話した相手が木津と知らずに、ファンは「日本代表の桜のエンブレムって昔、つぼみだったって知ってます? ラグビーって、面白いですね」と自慢げだった。

日本が勝つ価値を再確認し、ラグビーの盛況ぶりが誇らしかった。ブライトンの歓喜から1492日。人々の胸を打つ戦いを続ける代表へ、木津は強く願う。

「もっと嫉妬させてほしい。自信をもってやりきれば、食える確率は上がってくる。このままの勢いで、ドンと突き抜けてほしい」

ジャパンが持つ可能性を、信じている。【松本航】