日本の至宝が4年後、さらに光り輝く。NO8姫野和樹(25=トヨタ自動車)の初めてのW杯が幕を閉じた。1次リーグ全4試合にフル出場。

圧倒的な突破力を武器に初の8強入りに貢献し、先発出場した南アフリカ戦でも後半11分に途中交代するまで存在感を見せつけた。17年の代表デビュー以降、リーチ・マイケル主将の背中を追いかけ続けた2年間。かけがえのない経験を積んだ新主将候補が、23年フランス大会で再び世界を驚かすチームの柱になる。

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巨大な緑の壁にはね返されても、姫野は何度もぶつかり続けた。新たな歴史の扉を、もう1枚こじ開けようとしたが堅かった。後半11分に途中交代。試合後、ピッチで仲間と健闘をたたえ合うと、目から涙があふれ出た。「ラグビーで日本中が1つになれるのを感じた。本当に最高のW杯だった」。かけがえのない財産を胸に刻み込んだ。

憧れの大舞台で日本を象徴する選手になった。強豪アイルランド、スコットランド戦では何度も相手をひきずりながら前進。地元の愛知・豊田市で行われたサモア戦では、大観衆からの「姫野コール」を浴びながらトライを奪った。1次リーグを終え、複数の海外メディアからベスト15に選出されるなど、世界からも注目されるシンデレラボーイへと成り上がった。

大黒柱の背中が、ここまで成長できた源になった。19年2月、代表合宿で1人の先輩への徹底マークが始まった。視線の先は常に同じポジションのリーチ。尊敬する存在に「彼がいるといないとでは全然違う。吸収できることは吸収したい。将来的には超えて、もっと強い選手になりたい」とライバル心を燃やした。

W杯前には「日本ラグビーを引っ張っていく存在になりたい」と宣言した。その言葉通り、誰も疑いようがない活躍だった。世界を相手にし、視野も広がった。「ラグビー文化を根付かせるのがW杯後の僕の夢。海外挑戦もしたい」。8強入りの立役者は、ここでとどまる器ではない。

25歳で経験した世界最高峰の舞台。チームにはたくさんの先輩がいるが、自分に言い聞かせるように口にした。

「ダブルタックルをくらっても、前に出られるぐらい強くならないといけない。リーチさんの背中を見ただけで、元気になれる。そういうリーダーになりたい。これを、今後忘れないようにしないといけない」

4年後、フランス大会は29歳で迎える。選手としてさらに熟成し、次はチームの引っ張る存在として、日の丸を背負う。【佐々木隆史】