03年以来2度目の優勝を目指すイングランドが、3大会ぶりの決勝進出を決めた。過去7勝33敗1分けのニュージーランド(NZ)相手に、前半から10-0と圧倒。日本代表前ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ監督(59)の下で規律を乱さず、SOフォードの効果的なPGで同戦7年ぶりの白星にたどり着いた。11月2日の決勝(横浜)は、南アフリカ-ウェールズの勝者と悲願の頂点を争う。

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勝利を確信したサポーターの大合唱に包まれ、イングランドが試合終了の笛で抱き合った。開催国初となる1次リーグ敗退の悪夢から4年。観客と握手して7年ぶりのNZ戦勝利を喜んだジョーンズ監督は「ニュージーランドはゴッド(神様)」と日本語で切り出した。続いて「できるだけ、彼らの勢いを殺そうとした。心底頑張って、勝つ必要があった」とほほえんだ。

3連覇を目指した王者を真っ向から受け止めた。NZによる試合前の儀式「ハカ」をV字形で待ちかまえ、闘志のボタンを押した。CTBファレル主将は「そこに、ただ立って(ハカを)受けることはしたくなかった」。前半2分、ボールを広く動かしながら敵陣深くに進入し、CTBツイランギの突進で先制トライ。防御の隙を狙う相手攻撃に対しては反則に注意し、繰り返し白い壁を作った。後半は一時6点差に迫られたが、SOフォードのPG2本で主導権を握り続けた。

4年前、ラグビーの母国は屈辱にまみれた。自国開催のW杯は1次リーグでウェールズ、オーストラリアに敗戦。同じ大会で日本を率い、南アフリカから歴史的勝利を挙げたジョーンズ監督に再建が託された。指揮官は才能豊かな人材に細かな防御の技術、規律と自信を植え付け、今大会のイエローカードは0枚。伝統のパワーだけに頼らず、厳しい局面で真価を発揮する一体感が生まれている。

4度目の決勝は南アフリカ、ウェールズの勝者と相対する。ジョーンズ監督は「まだ歴史は築いていない。来週、もっといい試合をしないといけない」と手綱を締めた。1週間後、同じ横浜の夜空に復活の雄たけびを響かせる。【松本航】