15日にウエスタン・リーグが開幕した。現役時代「ミスタータイガース」として活躍し、昨オフ、2軍監督に就任した掛布雅之氏が、若虎たちをどのように変えていくのか。当コラムでは同監督を直撃取材した。春季安芸キャンプからスタートした掛布阪神の「超変革」を3回連載で追う。
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チームの現状は-。と言ってもファームに1軍で活躍できるほど実力の伴った選手はいない。基本は若手育成の場。要するにチーム作りの原点なのだ。確かに素質ある選手の集団だが、この中にひのき舞台で躍動するまでのレベルに至るのはほんの一握り。育成の主たる訓練は反復練習の継続。根気が勝負だが、今季の阪神は少々事情が違う。見通しは明るいと見た。
それは若手の成長である。2年前に掛布DCが就任してから、目をかけてきた、“掛布チルドレン”が、キャンプ、オープン戦で大いに頑張っている。3年目の横田をはじめ北條、江越、緒方といった選手の活躍が目立った。中にはファームに降格した若手もいるが、2軍の高知・安芸キャンプで手がけた新人の高山が、いまや開幕1軍のレギュラーを狙えるほどの力をつけている。
掛布監督は「若い選手が頑張ってくれているのはうれしいね。まだ、この先はどうなるかわかりませんが、かりに、彼らが2軍に落ちてきたとしても、昨年より一段階レベルの高いところから指導していける。そうなれば、おのずとチーム力はアップすると思いますね」と大いに楽しみにしている。同監督、選手へのアドバイスは決して上から押さえつけるような指導はしない。スタープレーヤーあがりの指導者は、自分のやってきた練習方法を、無理矢理に強制する傾向にあるが、選手とより多くのコミュニケーションを図り、ある時はジョークを交えて選手目線でアドバイスしている。選手にとっては雲の上の人だが、そう感じさせないところは現代風の指導者だ。
理想は…。選手が自分で物事を考えたり、先輩達のプレーを見て技術を盗み、積極的に実行するようになること。同監督は実行してきた。本人の話である。現在日刊スポーツの評論家をしている中西太さんに、たっぷり教え込まれたが、その中西さんに「お前とヤクルトの若松(元監督)この2人は本当に別格だったな」と言わせたほど。自分から進んで練習に取り組んだ選手の1人だ。また、先輩からも、自分の目で見て多くを学んだ。その極めつきは掛布監督が選手としてデビューした当時、チームの4番にどっかと座っていた田淵幸一氏の存在である。「田淵さんに、4番バッターというものを学びました」。果たして、何を学んだのか-。
負け試合のあくる日のスポーツ紙。打線が不振での敗戦となると、あたり前のように矢面に立たされるのが4番・田淵だった。特に4番がチャンスに打てなかったとなるとまるで、“戦犯”の扱い。野球は団体競技でありながら強烈な個人攻撃。かなり厳しい紙面になっていたが、それをぐっと我慢して次の試合に備えるのが4番バッターである。私も、阪神広報担当として数年間“4番・掛布”を身近に見てきたが、新聞紙上のかなり激しい批判にも、クレームをつけたことはなかった。現役引退後“掛布会”なるものが発足。私も退社してから何度かゴルフ、食事会に出席させてもらったが、この会の発起人を含め会員は、いずれも当時のトラ番記者だったことが、掛布が真の4番としてリスペクトされていたことを説明している。
早急に結果を出せというのは酷だが、OBの1人としたこうした、何事にも動じない、心、技ともに充実した「掛布2世」を育ててくれることを期待したい。いま、1軍のオープン戦で大活躍している横田が成長して1軍に定着するか。はたまた、オープン戦最終戦で昇格した江越が大きく変身するか。また、現在ウエスタン・リーグで早くも3ホーマーを放っている陽川が巻き返すか。そして、新人ながら即戦力としての力を発揮している高山に北條、緒方も期待大。掛布監督が「いまだにこの背番号(31)を僕がつけていること自体がさみしい。早くこの背番号を渡せる選手を育てたい。やっぱり選手がつけないとね」というように、今季若い選手の中から、「31番」をつけるスターが出現してほしい。次回も、もう一度監督にアタックしてみる。
【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)



