早実の清宮幸太郎内野手(2年)が、初の5打席連続三振でも来春センバツ出場をほぼ確実にした。日大三戦に「3番一塁」で先発。高校通算74本塁打の主砲は絶不調だったが、9回に4番野村大樹内野手(1年)のサヨナラ2ランで救われた。秋季大会の優勝は日本ハム斎藤を擁した05年以来11年ぶり10度目。明治神宮大会出場を決めるとともに、15年夏以来の甲子園がぐっと近づいた。

 清宮が、また奇跡を起こした。野村の打球が右翼席に突き刺さると、跳びはねて喜びを爆発させた。公式戦初の5打席連続三振を喫した主将が、人生初の胴上げ。5度宙を舞った。「(胴上げは)不思議な感覚で、気持ちよかった。自分が打ってきたことはあったけど、ここまで周りに助けてもらった優勝はない。キャプテンとして、うれしいです」。目を潤ませながら、チームメートに感謝した。

 バットにかすりもしなかった。日大三・桜井のボール球になるスライダーを、見極められなかった。5回の第3打席は見逃しで3球三振。9回無死一、三塁の第5打席も、甘く入った球を捉えきれなかった。「3球三振は今までもあるけど、こんなに三振した経験はない。やってきた中で、ダントツでいい投手」。昨夏のU18W杯決勝でも米国の左腕に2打席連続三振したが、「それ以上にひどかった。調子が悪くて打席で余裕がないし、ボールも見えてない」と完敗を認めた。

 最後まで仲間を、奇跡を信じた。昨夏の西東京大会決勝(東海大菅生戦)は0-5の8回に8点を奪い、初の甲子園を決めた。9回裏の攻撃前、円陣を組んで言った。「逆境を楽しもう。今までやってきたことを、すべて注ごう」。自ら掲げたスローガン「GO!GO!GO!」にも込めた、あきらめない思いがナインの打球に乗り移った。「みんなには『自分みたいな打撃はするな』と言っていた。去年はもらい泣きしましたけど、今日は泣いてないです」と、強がった。

 主将就任から公式戦7連勝。東京の頂点に立った。清宮は「誰かが失敗しても、誰かが助けてくれるチームになった。初球で打ってくれた野村は、男だなと思った」と笑った。2戦連発の高校通算21号で試合を決めた野村は、今大会の序盤は不振だった。「今度は自分がカバーする番だと思った。いつも打ってる清宮さんのほうが、男だなと思います」。築いてきた厚い信頼関係が、実を結んだ。

 清宮にとって、明治神宮大会は2度目の全国舞台。3季ぶりの甲子園も確実とした。「みんなと反比例して自分がダメ。ここからが勝負なので、しっかり調子を戻してチームに貢献したい」。関東第一との準々決勝から11打数1安打0打点の清宮が、大舞台で仲間に恩返しする。【鹿野雄太】