<高校野球春季神奈川大会:桐光学園7-0湘南学院>◇20日◇3回戦◇平塚球場

 「伝家の宝刀」スライダーを封印してもすごかった。昨夏の甲子園で大会新となる22奪三振を記録した桐光学園・松井裕樹投手(3年)が湘南学院戦で初登板。6回から2イニングを投げ、6者連続三振を奪う圧巻の投球を見せた。スライダーを投げずに26球。カーブ、チェンジアップを数球ずつ投げたが最速143キロの直球を主体に三振の山を築いた。チームは7-0で7回コールド勝ち。ベスト16入りを決め、今日21日には強豪横浜と対戦する。

 投球練習から独壇場だった。リリーフで登場した松井の一挙手一投足を目に焼き付けようとスタンドが静まりかえった。大入りの球場で響き渡るのは「パシン!」とボールを受けるミットの音だけ。主審から「プレー」の声がかかっても変わらなかった。6回からの6連続三振で金属音が鳴ったのは1度のみで、最後の打者に142キロの直球を辛うじてファウルされただけ。スタンドのファンからは「おおー!

 当たった」と、どよめきが起きるほどだった。

 スライダーを封印しても、ボールにバットが当たらない。8割以上の割合で投じた直球がキレを増したからだ。先月9日に行われた聖望学園(埼玉)との練習試合で「まずは真っすぐがこないと変化球とのコンビネーションは生きてこない。体重の乗せた球を投げたい」と直球を重視。「直球の感触を確かめたかった」と振り返ったように、冬場に行った下半身強化の成果を公式戦で試すため、スライダーをあえて投げなかった。

 「相手の打者がボールの下を振っている感じが見て取れた。自分自身の仕上がりが良い」と進化した直球に自信を見せた。バッテリーを組む鈴木航介捕手(3年)も「真っすぐが縦にキレイに回転するようになった。あいつのベストに近い投球。秋よりも(球のキレが)上がっている」と強調。球の回転数が上がり、初速と終速に差がないため三振を奪えたと分析する。

 それでもまだ試運転だ。今季の公式戦は2安打15奪三振で完封した地区予選の川崎工科戦以来(3月23日)。今日21日にはベスト8をかけ、横浜と対戦する。真価の問われる3戦目へ「横浜は強豪。夏も壁になる。挑戦者のつもりでやっていきたい」と意気込んだ。【島根純】