<高校野球春季関東大会:桐光学園4-3花咲徳栄>◇19日◇2回戦◇宇都宮清原

 昨夏の甲子園大会で1試合22奪三振の新記録をマークした桐光学園(神奈川2位)・松井裕樹投手(3年)に日米13球団40人超のスカウトが集結した。左腕は延長12回を投げ抜き6安打18奪三振。最速145キロ止まりで6回までに3失点したものの、延長12回を投げ抜き、サヨナラ勝ちに貢献した。失点後の精神面が課題だったが、7回以降1安打に抑えて勝利を引き寄せた。

 苦しんだだけ、松井の喜びは大きかった。延長12回1死二、三塁。サヨナラの打球が中前にポトリと落ちると三塁から雄たけびを上げながらサヨナラのホームを踏んだ。

 中盤までは劣勢を強いられた。球速が出やすいとされる球場でも、145キロ止まり。「マウンドが硬くて合わなかった」と屈伸をし、足元を確かめた。体重移動がスムーズにいかず、球に力が伝わりきらない。4回2死。プロ注目の若月健矢捕手(3年)に左翼フェンス直撃の二塁打を浴びた。その後連打を許し2死一、三塁とすると直球がワンバウンドする暴投。先制点を献上し、顔をゆがめた。6回にも2失点し、グラブをたたきいら立つような場面も見られた。

 ここから気持ちのギアをチェンジした。140キロ近い直球と120キロのスライダーで打者を手玉に取った。緩急をつけて、的を絞らせない。終わってみれば12回を投げ抜き6安打18奪三振。点差がつくと集中が切れることが多かったが「打たれても落ち着いて投げられた。メンタル面での成長があった」と7回以降を1安打に抑えた。

 精神的に成長した左腕にプロも目を光らせた。1万500人(主催者発表)の観客もさることながら、ネット裏にはスカウトがずらりと並んだ。日米13球団44人。16日に「最上位」と明言した巨人山下スカウト部長をはじめ、DeNA高田GMに日本ハム山田GMと各球団とも編成トップがこぞって集結した。

 周囲からは三振数を期待されるが、楽しみにしていたのは元チームメートとの対決だ。相手先発の関口明大投手(3年)と楠本泰史内野手(3年)とは中学時代に青葉緑東シニアで全国制覇。今でも正月に集まって遊ぶほど仲がいい。今大会の開幕1週間前にはスマートフォンの無料通話アプリ「LINE(ライン)」で「久しぶりに会えるな。対戦が楽しみだな」と連絡を取り合った。親友でもあるライバルより先にマウンドを降りるわけにはいかなかった。「(鈴木)航介も含めた4人そろって野球ができたのは幸せな時間だった。今日は暴投などのミスが出た。夏はないようにしたい」とさらなる進化を誓った。【島根純】