先の見えない大接戦は「ビシエド劇場」で締めくくられた。中日ダヤン・ビシエド外野手(27)が5-5の8回、決勝の13号ソロを右翼席に運んだ。主砲のリーグ単独トップに立つ1発でチームは連敗を3でストップ、広島戦の連敗も6で止めた。負ければ勝率5割に逆戻りの瀬戸際でうっちゃり返した。谷繁監督も「大きい」と認めた力強い1勝で、2位に浮上した。

 飛球を悠然と見送った。一塁を回ると、右のこぶしを小さく握った。8回の先頭。その初球。ビシエドがジャクソンの150キロを狙い打った。「打った瞬間、本塁打と分かった。大事なところで一振りで試合の行方を変えられてよかった」と笑顔、笑顔だ。

 前の3打席は初対戦の岡田に対して飛球3つ。「ミスショットが多かったけど、最後は慌てずに仕留められた」。この修正力が一番の特長。練習では体重移動を意識して、1本足で打ったりと試行錯誤を欠かさない。「自分の感覚がいいところをいつも探している」。日本に来ても打撃スタイルは変えない。谷繁監督も「ブレずに修正できる」と強みを挙げる。

 お次は最後の守備。9回1死二塁のピンチで菊池の三塁ゴロの間に、二塁走者の赤松が三塁を狙った。「走ったのでびっくりした」としながら一塁から弾丸のような送球を三塁に送り、間一髪で試合を終わらせた。定評のある強肩に加え、冷静な判断力も光った。

 普段は感情を極力抑える指揮官が「本当に大きな1勝」と明言した。7回に3連続適時打で同点。そして主砲の1発。負けムードを振り払う力強い攻撃に、指揮官も手応えがあった。

 打撃、守備と続いたビシエド劇場のシメはまさかの「笑い」だった。ヒーローインタビューの最後。「明日も打ってくれるかな?」と振られると、桂川通訳の“ささやき”を受けて「イイトモ!」と笑顔で叫んだ。3万観衆は千両役者に拍手喝采だ。

 試合後、アナイ・モリーナ夫人(27)が単身で初来日。3人の子どもは米国で預けて、異国で奮闘する自分の激励にやって来てくれた。「彼女は野球を知らないけど、いつも支えてくれるんだ」。本塁打争いのトップに立った日、さらに最高のパワー源を得た。ファンに約束した「イイトモ」が現実になる可能性も高そうだ。【柏原誠】