背水のマウンドで底力を見せた。巨人高木勇人投手(26)が7回2失点と粘りの投球で3勝目を挙げた。直近2試合は6失点、5失点でKO負け。ローテーション落ちの危機に、2軍調整中の阿部からは“愛の説教”を受け、正捕手の小林誠とは“夫婦げんか”を繰り返し、復調のきっかけを得た。3試合ぶりの白星で、チームも開幕以来の4連勝で首位固めに入った。
高木は打者をにらみつけた。負けん気があふれ出た。一打同点の7回2死二塁。代打飯原に粘られた。苦しい表情は見せない。「絶対に負けるか、って気持ちでした」。余力を振り絞った9球目のフォークで空振り三振を奪い、ほえた。
ローテ落ちの危機だった。ここまで7戦で2勝止まり。前回8日の中日戦では、5戦連続で相手投手に安打を許し、5回0/3、5失点でKOされた。「結果が出ずに暗くなった。どんどん悪い方に行く感じ」。背中が小さくなっていった。
恋女房たちが手を差し伸べてくれた。9日のジャイアンツ球場での練習後、野太い声に呼び止められた。「明日、話があるから来られるか」。右肩痛で2軍調整中の阿部だった。翌日は休養日も迷わず出向いた。
ロッカー室で約10分、膝を突き合わせた。「また打たれるんじゃないかって泣きそうな顔をして投げてる。繰り返していたら野手も怒るぞ」。阿部が「根性論をたたき込んだ」と言うように、耳の痛い言葉もあった。だがわざわざ“説教”をしてくれた真意は理解していた。「阿部さんの話でいろいろ考えました」と背筋を凜(りん)と伸ばし、気骨を見せると決めた。
同学年の小林誠とは、内角球と変化球の使い方を再考した。議論が白熱し「何回もケンカになった」と殺伐とした空気も流れた。だが相手は「1人1人向かっていくことが大事。智之(菅野)みたいに抜くところや、ピンチでギアを上げるのではなく、回の先頭から丁寧に行くこと」と根気強く“夫婦げんか”に付き合ってくれ、諭してくれた。
愛に包まれた叱咤(しった)を力に変えた。前半は140キロ前後だった直球も、6回に最速148キロに達した。恋女房たちの下支えを受け、今季2度目の4連勝に導いた。「1球1球、自分をコントロールできた。次につながる勝利だと思います。絶対次も勝ちます」。若旦那は力強く宣言した。【浜本卓也】



