打撃3冠に肉薄した。ヤクルト山田哲人内野手(23)が、1回に先制の24号2ランを放った。今季初めてとなる右翼席へのアーチ。3回にも2点適時二塁打を放つなど、リーグ戦の再開初戦も2安打4打点と勝負強さを発揮した。本塁打数と打点でリーグを独走し、打率でも試合中に1度はトップに浮上。その後、巨人坂本に再び抜かされたが、2厘差でライバルの背中を視界に捉えた。

 山田の描く放物線が、いつもとは違う方向に向かった。0-0の1回2死三塁。「追い込まれていたので、とにかく三振だけしないように。直球とチェンジアップが頭にはあった」とカウント2-2から、中日先発若松の外角低め137キロ直球を捉えた。左翼スタンドへ21本をマークし、中堅方向には2本だった本塁打。今季初めて右翼席へアーチをかけた。先制の2ランで、本拠地スタンドのボルテージを一気に上げた。

 理想の右打ちだった。山田にとって、逆方向の1発は憧れの放物線。同じセ・リーグで活躍する本塁打アーティストを羨望(せんぼう)のまなざしで見つめる。「DeNAの筒香さんはすごい。もちろん引っ張っても打てるし、引きつけてポイント近くで逆方向にも打っている」。山田が言うように、筒香は今季16本塁打中、右翼に10本、中堅に1本、逆方向の左翼には5本も打っている。

 もちろん、理想を追い求めているだけではない。「今は引っ張りでそんなに苦労していない。ヒットも出ていますし。その中でゴロとか増えてきたら、逆方向への意識を持つかな」と冷静だ。無意識の中で生み出した逆方向の1発に、杉村チーフ打撃コーチは「素晴らしい見事な打撃だった」と称賛した。

 先制弾だけではない。3回無死二、三塁からは左翼線へ2点適時二塁打をマーク。「得点圏で打てていないので」と課題を口にしていたが、リーグ戦再開の日に勝負強さを発揮した。この2打席で打率は3割3分。一時は巨人坂本を1厘差で上回り、首位打者に躍り出たが、坂本が1安打を放ったために2位に後退した。それでも2厘差。1差につける安打数とともに、今日25日にも打撃6部門でリーグ1位に立つ可能性がある。「そういうのは興味ない」と素っ気ないが、この勢いに死角は見当たらない。【栗田尚樹】