糸井どりに好感触だ。阪神金本知憲監督(48)がFA宣言選手との交渉が解禁された11日、オリックスから権利行使を表明した糸井嘉男外野手(35)と初交渉を行った。「初めての恋人や」。情熱的な口説き文句で、自身が02年オフのFA移籍で体験した「星野仙一流」で押しまくった。恋人のハートをつかみ、手応えは十分。虎の糸井誕生へ大きく前進だ。
金本監督が「闘将」になった。獲得を熱望する糸井とテーブルを挟んで、対面した。「第一印象はすごく体が強いなと。若さというか。とても今、35歳の選手には感じられない」。体から発散するオーラに、思いをさらに強くした。もう口説くしかない。「とにかくチームが勝つため、チームが優勝するために力になってくれ」。悲願のリーグ制覇に必要不可欠な戦力であることをストレートにぶつけた。そして思わず、口から出た。
「初めての恋人や」
交渉解禁日の交渉が決定するや、前夜に緊急帰阪。秋季キャンプの1日をつぶして、糸井に会いに駆けつけた。「それくらいしてでも、どうしてもほしい選手だった。恋人以上だと思ってますんで…」。約1時間の交渉を終えても、顔は上気したまま。照れもなく、熱のこもった言葉が次から次へと飛び出した。
自らの経験があった。02年オフに広島からFA宣言。当時の星野監督が直接出馬し、交渉役を務めた。「僕の場合はあまりにも、星野さんの強引過ぎるお誘いで、無理やり連れてこられた部分もありましたけど…。僕は穏やかな熱意を持って。しかし思いは星野さんに負けないくらい伝えた」。直球のラブコールが一番心に響く。穏やかと表現したが、すぐに自ら修正した。「実は今日はあまり穏やかではない。熱く熱くね」。情熱的に押しまくったことをほのめかした。
今回の交渉ではオリックスが提示した4年総額18億円(推定)と同等の大型契約を提示した模様だ。糸井が愛着を持つ背番号7も用意。起用法の話題には至らなかったが、金本監督の期待はどこまでも大きい。「もし彼がタイガースに来てくれるとなれば、もっと若手の競争が激しくなる。プラス、見本に必ずなってくれる」。
是が非でもほしいという思いは抑えられない。糸井が要望すれば、何度でも交渉に就くつもりでいる。「彼が迷っているようなら、何度でも会いたいと思う。手応えまでとはいかないけど、次の機会があれば、もっと強引に星野式でいく。実は(今回も)星野式でいっているけどね」。これだけのラブコールが心に響かないわけがない。好感触の熱血交渉。虎の糸井誕生に、大きく前進した。【田口真一郎】
◆FA金本獲得への阪神星野監督出馬VTR 02年オフ、FA宣言した広島金本に阪神星野監督は「土下座して取れるなら土下座する」と、獲得へ強烈な執念を燃やした。進路に悩む金本にはメディアを通じ「俺なら悩んだら動く。迷ったら動く。後悔したくないから」と強烈なアドバイスも。11月15日、岡山市内での初交渉では「みんなの力で阪神を変えて、優勝しよう」と直球勝負。金本は「全力を挙げて優勝したいという姿勢が伝わり、ひかれた」と入団を決意した。
<FA選手への名口説き文句>
◆93年巨人長嶋茂雄監督が落合博満(中日)に 「お前の生きざまを若いやつに見せたい」と熱い口調で訴え、入団にこぎ着けた。
◆96年阪神吉田義男監督が清原和博(西武)に 伝統のユニホームを「タテジマからヨコジマに変えてでも」と前代未聞の誠意を示すも、獲得には至らなかった。
◆96年巨人長嶋監督が清原(西武)に 2度目の交渉で出馬。「思い切って、僕の胸に飛び込んで来てほしい」との一言が効き、清原は巨人へ。
◆98年中日星野仙一監督が武田一浩(ダイエー)に 闘将らしく「チマチマと逃げる投手が多い中で、いつも強気に大胆に向かっていくところが素晴らしい」と褒めちぎり、獲得成功。
◆99年阪神野村克也監督が星野伸之(オリックス)に 遅い球を駆使する左腕に「技巧派として一級品のキミの投球術で、阪神の投手たちに何かを感じさせてやりたい。一緒に野球の勉強をしよう!」と語り掛け、移籍に導いた。



