<ヤクルト4-11阪神>◇18日◇神宮

 7回表2死二塁。阪神平野恵一外野手(31)が左翼線にタイムリーを放った。二塁に滑り込む。セーフ!

 右手で地面をたたく。目の前には、笠原塁審がいた。怒りではなく、喜びの表現だ。「良い形でタイムリーを打つことができて、二塁まで行けたことは恩返しという言葉は変だけど、何かプレーで感謝の気持ちを示すことはできたかな」。神妙な顔つきで、快打を振り返った。

 前夜に微妙な判定で、ヘルメットをたたきつけ、一塁の笠原塁審への侮辱行為で退場処分を受けた。この日の試合中、話す機会があった。「多くの子どものファンが見ていて、あこがれの存在である平野くんが、昨日のような態度をしたらいけないと思う」。この言葉に、平野は大きくうなずいた。

 「深く反省した。僕の中で、今日は野球人生の中でも、ある意味、リスタートの試合だった」。審判を侮辱する意識はなかったが、素直に受け止めた。だからタイムリー二塁打は自身の中でも価値のあるものだった。

 9回には三塁線へのバントが内野安打になり、3安打猛打賞を記録。「いい試合をして、子どもたちに喜んでもらいたかった」。一夜明けて、平野はファンを歓喜させるヒーローになっていた。

 [2010年7月19日12時24分

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