<阪神5-5中日>◇31日◇甲子園
粘りの虎、号砲を鳴らしたのはクレイグ・ブラゼル内野手(30)だった。2点を追う7回2死。逃げ切り態勢に入った中日のセットアッパー浅尾から、バックスクリーン右に豪快な追撃アーチ。広島戦で33号を放った巨人ラミレスに負けじのキング弾でチームを勢いづけた。89試合目で早くも昨年のチーム本塁打数を突破。破壊力でも宿敵に負けてませんで~。
グラウンドを離れると、疲れがドッと押し寄せた。目力はなくなり、いつもの笑顔すら作れない。ブラゼルの表情が死闘をすべて物語る。「自分にしても、誰もあきらめなかった結果だよ。勝つことはできなかったけど、負けることもなかった」。5時間25分。延長12回を戦い抜いた男は、引き分けに持ち込んだ充実感を言葉で必死に表した。
そう、この怪力助っ人が大熱戦を呼んだ。2点を追う7回裏2死。マウンド上には浅尾。競り負けが現実味を帯び始めた矢先、ひと振りで流れを変えた。カウント2ー1と追い込まれると、いつも通りバットを短く持ち、スタンスを広げる。外角高めへ突っ走る152キロをコンパクトにミート。“つなぎ”を意識したにもかかわらず、打球は弾丸ライナーでバックスクリーン右に突き刺さった。直前の2打席は連続三振。胸に秘めた悔しさは、1点差に迫る1発で吹き飛ばした。ナインの心に火をともし、反撃ムードを作り出した。
竜が誇るセットアッパー浅尾の速球も何のそのだ。剛速球ならメジャー時代に何度も体感している。1番印象に残っているのはジョン・スモルツ(当時ブレーブス)との対戦だという。「1球目にいきなり162キロの直球を投げられて、148キロのフォークを2球続けられてジ・エンドさ」。メジャー屈指の剛速球男だったランディ・ジョンソン(当時ダイヤモンドバックス)とも対戦し「背中からボールが来る感じだったよ。本当に怖かった」と苦笑いで振り返る。数々の剛速球と対戦した経験は今、確かな強みとなっている。
7月28日横浜戦では自打球を左ひざ付近に当て、途中交代。すぐさまアイシング用のリハビリ機器を神戸市内の自宅に持ち込み、冷水をあて続けた。そして、前日30日中日戦、この日と当たり前のようにフル出場。あっさり3試合ぶりの33号ソロをたたき込むから頼もしい。本塁打王を争う巨人ラミレスが広島戦(マツダ)で33号をたたきこんだ夜、すかさずセ界トップに並んだ。いや、そんなことは関係ない。ブラゼルはとにかく勝ちたかった。【佐井陽介】
[2010年8月1日10時53分
紙面から]ソーシャルブックマーク




