<ヤクルト6-3巨人>◇12日◇神宮

 ヤクルトが8年ぶりの9連勝とした。同点の4回2死走者なしから、3番飯原誉士(やすし)外野手の11号2ランと、5番畠山和洋内野手(ともに27)の8号2ランで一挙4点。リーグトップタイ12勝の巨人東野を打ち崩した。先発の由規投手(20)は8回途中7安打3失点。この日は縮まらなかったが、最大11・5差あった3位中日とのゲーム差は3・5。クライマックスシリーズ進出が完全に視野に入ってきた。

 緑や青の傘が揺れ、歓声が飛び交う中、小川監督代行は由規と握手すると、いつものように足早に球場を後にした。浮かれてはいない。既に頭の中は次戦に向けられているようだった。

 同点の4回。3番飯原が2戦連発となる2ランを左翼席に運んで勝ち越すと、さらに5番畠山も右中間へ2ラン。2死からの攻撃で、今季3敗を喫していた東野から一気にリードを奪った。8月に入って3番は飯原、武内、畠山らの日替わり。11日に8戦ぶりに3番スタメンに戻した飯原は、2試合で3本塁打7打点と大当たりだ。「畠山なんかも打てなければ外されると思ってるんで、集中力を感じる。うまく循環してますね」と小川監督代行。チャンスを平等に与えられる打線の競争意識は高い。これで04年5月以来6年ぶりの6戦連続2ケタ安打をマークした。

 5月は最下位だったチームを、上位巨人を圧倒するまでによみがえらせた。小川監督代行は10日の試合前、大学時代にともに日本代表のクリーンアップを務めた巨人原監督から「調子いいですね」と声をかけられると「いやいや、巨人が相手では蛇ににらまれたカエルのようなもんだよ」と返した。それが、戦ってみれば逆の立場となった。

 小川代行にとって巨人はあこがれの存在。学生時代はテレビアニメ「巨人の星」に夢中だった。最終回が放送される日、練習で右腕を負傷。それでも激痛に耐えて帰宅し、テレビにかじりついた。翌日病院で検査を受けると、腕は骨折していた。習志野(千葉)2年時の74年には友人宅のテレビで巨人長嶋茂雄の引退セレモニーに涙した。プロの世界への大きな夢を抱き、翌75年夏に甲子園に出場し優勝投手となった。

 巨人戦での同一カード3連勝は2年ぶり。勢いは本物だ。それでも「いつまでもこの状態が続くとは限らない。(連勝は)特に意識しない。連勝してるから明日も勝とうじゃなく、その日その日でベストを尽くすだけ」といつもの口調は変わらなかった。最後まで浮かれるつもりはない。【由本裕貴】

 [2010年8月13日7時53分

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