<中日0-3ヤクルト>◇20日◇ナゴヤドーム

 落合竜がリーグ最多タイの1試合5与死球でヤクルトに完敗。連勝が7で止まり、わずか1日で3位に逆戻りした。打線がヤクルト先発館山に散発4安打に封じられると、先発マキシモ・ネルソン投手(28)も7四死球(うち3死球)を与えるなど徐々に制球を乱して5回1/3を3失点でKO。本拠地連勝も12でストップ。阪神、巨人と激烈な争いを繰り広げる中で、リーグ唯一負け越している天敵(6勝10敗1分け)にまたも足をすくわれた。

 完敗だった。試合終了の瞬間、落合監督はだれよりも早くベンチを立ち、ロッカー室へと消えた。「何にもねえな。きょうは。何かあるか?

 野球は投手と3、4、5番だ。(館山は)気持ちよく投げていたな。気持ちよく投げさせちゃだめなんだけどな」。打線はヤクルト先発館山の左右の揺さぶりの前に散発4安打。三塁を踏むことすらできなかった。援護のない焦りからか、投手陣には不名誉な記録までついてしまった。

 3回まで3四球を与えながらも無失点で切り抜けた先発ネルソンが、急に乱れ始めたのは4回だった。1死からホワイトセルへの内角直球がわずかに外れ、151キロの速球が左足を直撃した。これをきっかけに2死一、三塁とされるとユウイチに右前へ運ばれ、痛い2点目を献上。5回には青木にソロを浴びた後、武内にも左足への死球。そして6回、ユウイチにこの日、3つ目の死球を与えたところで降板が告げられた。

 「内角へ投げようと思ったのがカット気味になって死球になってしまった。4回からはうまく(制球)できなかった」。5回1/3を3失点で2敗目を喫した助っ人右腕は、制球の乱れを悔やんだ。天敵ヤクルトへの意識が手元を狂わせたのか。死球の連鎖は止まらなかった。7回、2番手小林正が青木のひじに当てると、3番手鈴木も飯原の背中にぶつけた。セ・リーグ4度目のタイ記録となる1試合5死球となった。

 ただ、落合監督は死球の内容に釈然としなかったのか、あえて、こう言った。

 「死球は野球につきものだ。ただ、オレが打者だったら当たっていない。逃げるのも技術だ。今はいい道具があるから、わざと当たってくる選手もいる。それでも死球なんだ。まあ、オレが現役だったら命持っていかれているけどな」。

 現役時代、激しい死球攻めにあった3冠王だけに、逆に相手のよける技術のなさを指摘した。特に7回の青木の死球に関しては田村捕手コーチも「打ちにいっているから当たっても仕方ない」と納得できない様子だった。阪神、巨人との優勝争いの中、リーグで唯一負け越しているヤクルトは越えなければならない壁だ。死球をめぐるベンチの熱い反応に、強烈な対抗意識がにじんだ。【鈴木忠平】

 [2010年8月21日10時43分

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