オレ自身を超えてやる!

 阪神マット・マートン外野手(29)が29日、米国から関西国際空港に到着した。来日1年目の昨季は日本新記録のシーズン214安打を達成したが、チームは中日に1ゲーム差の2位。今季は10年シーズンの自身の記録を超え、チームも2位から頂点に導く。

 満面の笑みだ。到着した関西国際空港。マートンは大勢の報道陣を見つけると「ヒサシブリ!

 ゲンキ?」とニッコリ。続けて機中で覚えた日本語を披露した。

 「マタ…、モドッ…、テ…、コレテ、ホンマニウレシイワ!」。

 最後は「スミマセ~ン」と照れ笑い。帰国後の3カ月遠ざかっていた日本語を復活させ、2度目の来日を心から喜んだ。

 「第2の故郷に帰ってこれてうれしいよ。早く(大好物の)吉野家を食べたい!

 向こうに帰った直後は、米国人向けの量を食べきれなかったんだ。日本の食事が恋しかった」。

 1年前、「ここにこれてホンマにうれしい」と関西弁を交えてあいさつした無名の男は日本新記録のシーズン214安打、打率3割4分9厘、17本塁打に91打点…。前人未到のイチローをも超えた。さぞ米国ではバラ色のオフだった?

 いや、いつも謙虚な赤毛の助っ人が浮かれる訳がない。

 10月下旬に帰国後、1週間も経たずにトレーニングを再開。自宅のあるジョージア州アトランタで自主トレを始めた。年明けからは母校ジョージア工科大を拠点に弟ルーク(ヤンキース傘下1A)らとウエート、打撃練習に励んだ。今季から導入される統一球は、まだあえて打ち込んでいない。「ボールが変わっても野球は変わらないから」。今日30日に沖縄入り。2・1キャンプインを前にしても不安はない。

 「数字は常に良く、前進していかないといけないと思っている。良い数字を残せたけど、10年は終わって11年が来た。新しいチャレンジを楽しみにやっていきたい。毎試合、勝利に貢献するためベストを尽くすだけ。常に向上、前進していきたい。個人的にもチームとしてもそう」。

 何度も「前進」を強調した。日本球界では過去、2年連続して200安打を超えた選手はいない。それでもマートンは自身の214安打より上に視線を置き、チームを1ゲーム差の2位より押し上げる-。目指す頂は明確。過去の自分を超えていく決意だ。

 「10割打者はいない。エラーをしない選手もいない。完璧はありえない。だから自分自身、まだ良くなる部分はある。少しでもそこに近づけるようにしたい。野球は常に前に進んでいくからね」。

 日本中を驚きと熱狂で染めた10年も満足感はない。そう、マートンは3カ月前、いや1年前と何ら変わらない。謙虚で向上心の塊。何も変わらず、11年も虎を勝利に導いてくれる。

 [2011年1月30日11時10分

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