<阪神3-14オリックス>◇5日◇甲子園

 阪神真弓明信監督(57)が、就任3年目で初めて感情をあらわにした。オリックス戦の試合中に投げかけられたヤジを巡り、スタンドのファンとにらみ合った。トラブルには至らなかったが、試合は絶望的な大敗。今季初の2ケタ失点、監督就任後ワーストタイの14失点で、借金はついに10。最下位に転落した。指揮官の怒りは、巻き返しの起爆剤となるのか。

 就任3年目にして、初めてファンの前で感情をあらわにした。3-14と大差がついた8回、オリックスの攻撃中。真弓監督が、一塁ベンチでクルリと後ろを振り返った。数人のファンが自分の席を離れて一塁ベンチ上でヤジを飛ばしていた。指揮官はそのファンと向き合い、10秒近く視線を交錯させて、言葉をかわした。最後は自分の席に戻るよう、ことを促すしぐさを見せた。温厚な指揮官にとって極めて珍しい光景だった。

 近くにいた内野席の観客によれば、指揮官が反応したのは「(真弓監督の)ついでに、やめろ」という選手に向けたヤジだった。真弓監督は観客のヤジについて「そりゃあ、耳には聞こえてくるよ。でも聞かないようにしています」と話しており、自分への言葉に反応することはない。この日のヤジも最初は真弓監督に対しての「やめろ」という言葉だった。だが続けて懸命にプレーする選手に対して「ついでに、やめろ」という言葉があったために、図らずも反応したようだ。

 試合を終えた指揮官は観客とのやりとりについて、冷静な口調でこう話した。

 真弓監督

 いやいや、お客さんは大事にしないとね。

 紳士的な指揮官はファンといざこざを起こすようなことは本意ではないが、選手をかばった形だ。ヤジを飛ばしていたファンは球場内の警備員によって自分の席に戻るように促された。

 フラストレーションのたまる試合だった。先発久保が2回途中7失点でKOされた。大きなビハインドを背負った打線は、打っていくしかない状況になった。

 真弓監督

 (2回以降に)立ち直ってくれないと試合になんないんだよな。(打線も大差がついた)こういう時にちょっと調子が出てくれれば、いいんだけどね。兆しは少しずつ出つつあるかなと思うが、まだまだ。

 今季初の2ケタ失点、監督就任後ワーストタイの14失点。借金も09年8月23日以来の2ケタに突入した。

 真弓監督

 借金は少ないほうがいい。早く立て直して、ひとつずつ減らしていきます。

 厳しいヤジを、拍手に変えるには白星を積み重ねるしかない。【益田一弘】