<広島2-0中日>◇26日◇マツダスタジアム

 竜の左腕エースと広島の主砲に遺恨が勃発した。打線の援護なく8回途中まで2失点で今季5敗目を喫した中日チェン・ウェイン投手(25)が広島栗原に怒り心頭だ。左肘に直撃する死球を2つ与えたが「4番があれじゃあ、肘が折れても仕方ない」と、相手が避けなかったと激高。生命線の内角球を「これからもドンドンいく」と不穏に言い残した。

 試合が終わっても怒りは収まってはいなかった。むしろ増幅していた。ロッカー室から出てきたチェンはぶぜんとした表情。普段は温厚な25歳が怒りを爆発させて早口でまくし立てた。

 「自分から当たりにいったんだから仕方ない。サポーターもしているし、4番がそういうことをするなら肘が折れてもしかたがない」

 問題の場面は0-0の8回1死三塁。4番栗原の打席だ。簡単に2球で2ストライクに追い込みながら、内角高め149キロの直球が左肘を直撃した。ピンチが一、三塁に広がり、セットアッパー浅尾と交代。チェンはマウンドで不服そうな表情を浮かべていた。

 伏線があった。4回にも先頭打者栗原への内角球が左肘に当たっていた。まるで再現VTRを見ているようなシーン。打者がインコースを投げさせないために、意図的に左肘を突き出しているのではないか…。右打者内角への制球が生命線の左腕には、そんな疑惑が頭を巡っていた。

 「あれじゃあ、ピッチャーはインコースが投げられなくなる。自分は関係ない。自信を持ってるまっすぐだから、どんどん当てにいくしかない」

 投げても投げても勝ち星を手にできないもどかしさが、怒りに拍車をかけていた。1日ソフトバンク戦から4試合連続で黒星。うち3試合が無得点と援護に恵まれていない。

 「自分としては攻めてるんで、このピッチングを続けるだけ。苦しいのは苦しいけど、1点勝負だと思ってやっている。そういう試合になっているので仕方がない」

 チームにとっても不完全燃焼の試合。打線が散発3安打に封じられチェン-浅尾の鉄壁リレーで敗戦。交流戦明け、最初のカードを負け越した。「ドンドンいくしかない」。チェンは繰り返した。次回、広島と対戦するのは7月15日からのナゴヤドーム。左腕エースが遺恨を抱え込んだ。【桝井聡】