<巨人7-5中日>◇1日◇東京ドーム

 巨人が中日との首位攻防戦に3連勝し、6月7日以来となる首位を奪った。ローテーションの谷間となった先発には、ドラフト7位ルーキーの田原誠次投手(22)を抜てきした。田原が2回を無失点に抑えると、その裏無死満塁と先制の好機に代打矢野を投入。その矢野が2点適時打で応え、主導権を握った。3回から継投に入り、最後は総力戦ながら6投手のリレーで反撃をしのいだ。谷間の戦い方で、中日の勝ち頭・山内を下し、底力を見せつけた。

 勝てば首位に立つ。原辰徳監督(53)が先発に送り出したのは、プロ初先発のルーキー田原だった。「先制を許すな」と送り出した。2回2死一、三塁、打者谷繁のピンチ。「僕を知らない。インコース、思い切って」。内角を詰まらせしのいだ。その裏、無死満塁で打席が回ってきた。早い仕掛けで代打・矢野。先輩は「田原のために」と、先制の2点適時二塁打で応えた。田原は22球でお役御免。任務を全うし、3回から総力戦になった。

 無失点の先発を2回で降ろし継投。原監督は「本来のローテ投手ならば、あそこは打たせたと思う。しかし、今日はある種、特殊な想定。攻撃に転じると判断しました」と明かした。「同一カードを3連勝することは大変」と身をもって知る。相手はライバル中日で、しかも先発が谷間という特殊性が重なった。試合前のブルペン。川口投手総合コーチから「今日は全員で勝つぞ!」の号令が飛んだ。ルーキーの後を、5投手が必死につないだ。

 杉内、内海を軸とした先発陣だが、頭数がそろっているとは言えない。だが今季の巨人は、谷間の試合をことごとく拾う。7月1日、大切な首位攻防3連戦の最終ラウンドに、谷間が来る。交流戦中から分かっていた。首脳陣は勝負どころから逆算し、開幕直後から周到な準備を進めていた。

 「先発田原」は一見、急場をしのぐ緊急登板に見える。現に2日前まで、4年目の笠原が筆頭候補だった。ブルペン投球が振るわず田原に役目が回り、本人は「前日の練習中に言われました」と明かした。だがベンチの思惑は違った。5月から1軍に呼び、主に敗戦処理を任せていたドラフト7位。低めストライク率の高さに注目していた。

 川口コーチ

 勝利と育成の両立は難しいが、統一球の今こそが、新人を育成する時だと思う。それに、幸いにもウチの先発とリリーフは安定している。

 巨人の歴史で、大学、社会人出身の新人投手4人が、すべて1軍の舞台を経験したのは今年が初めてだ。田原は「東京ドームのマウンドは経験していたので、緊張せずにいつもと変わらずに立てました」と言った。チーム力を底上げし、計算ずくで乗り越えた。

 原監督は「相手も死力を尽くしてくる中、全員がしっかり守った。3つ取ることは大きい。ジャイアンツにとって素晴らしい1勝」と、谷間を落とさず奪い返した首位を喜んだ。「勝負は9月、が定石。7月は、その準備期間」と青写真を描く。「これから気候とともに、どんどんどんどん熱い戦いになっていく」。地力を蓄えながらトップに立った。実りの秋に向け、本格的な地固めの夏にする。【宮下敬至】

 ▼巨人が5連勝で6月7日以来の首位に立った。5月に10連勝を記録している巨人だが、同一カード3連戦3連勝は今季初。東京ドームの中日戦は昨年から1分けを挟んで8連勝となった。この日はプロ初先発の田原が2回で降板。巨人の先発投手が5回を投げずに降板したのは今季11試合目。昨年は先発投手が5回未満のケースでは8勝21敗2分けと大きく負け越したが、今年は6勝5敗。先発が早く降板した試合でも星を拾っている。