<ヤクルト7-9阪神>◇17日◇神宮

 阪神の勝利の余韻が、吹き飛んだ。スタメン復帰したマット・マートン外野手(30)が、3回にお粗末な左翼守備を連発し、懲罰交代。ヤクルトに競り勝った試合後のベンチ裏で関川浩一外野守備走塁コーチ(43)に逆ギレし、周囲に止められる場面があった。その後はクラブハウスで同コーチと1時間話し合った後、2軍落ちが決定。去就問題に発展する可能性も出てきた。

 勝利の後とは思えないシーンだった。試合終了後、ベンチ裏の控室で「事件」は起きた。拙守連発で懲罰交代となったマートンが関川外野守備走塁コーチに何事か言われると、逆上して詰め寄った。これに関川コーチも応戦。顔がくっつかんばかりの距離で口論する2人を、慌てて有田修三ヘッドコーチ(60)、クレイグ・ブラゼル内野手(32)が制止に入った。取材を待つ報道陣から丸見えだったため、広報が急いで扉を閉めるなど異様なムードだった。

 引き金となったのはマートンの左翼守備だった。3回無死二、三塁、代打川本のドライブのかかった打球が左翼ほぼ正面へ。ところが、マートンは目測を誤ったのか、バランスを崩して転倒。白球が転々とする間に2者の生還を許した。さらに続く代打山田の打球は左翼右への飛球。前進しながらスライディングキャッチを試みたマートンだが、打球は自らの足に当たって右翼方向へ。記録はヒットだが、ともに二塁打にして傷口を広げた。慣れない左翼での起用ではあったが、ミスと指摘されても仕方のないものだった。

 さすがの和田豊監督(49)も我慢の限界に達したのか、すぐさま交代を告げた。イニング途中で異例の「懲罰交代」。マートンは厳しい表情でベンチに戻った。試合後の関川コーチとの口論の後も通訳を介して「話すことはないです」とコメントしただけだった。

 これまで打撃不振の際も、暴言騒動の際も、対話によって復活を待つ方針を崩さなかった指揮官も今回ばかりは怒りを隠さなかった。試合後、今日18日に出場選手登録を抹消し、柴田講平外野手(26)を昇格させることを決めた模様だ。

 「打てない時に集中力を欠くプレーが多い。あれは捕ってやらないと投手がかわいそうだよ。使い方を考える?

 そういうことだ」

 2試合ぶりにスタメン復帰させたが、2打席目まで走者を置きながら初球を打ち上げて内野フライに倒れた。精神的なムラを見せた助っ人に和田監督は「懲罰降格」という形で断固たる姿勢を示した。

 全選手がバスで引き揚げた後、マートンと関川コーチは約1時間、神宮球場クラブハウスで話し合いを行った。帰り際は和やかなムードだったが、今後は現場から球団首脳へ報告され、この“事件”への対応が検討される見込み。2年契約を結んでいるマートンだが、コーチ批判、チームへの造反と判断されてもおかしくないだけに、去就問題へ発展する可能性もはらんでいる。【鈴木忠平】