<阪神3-0DeNA>◇9日◇甲子園

 和田阪神が快勝で有終の美を飾った。先発能見篤史投手(33)は「フォア・ザ・チーム」の精神にあふれていた。最多奪三振の初タイトルまであと2三振だ。1回。先頭荒波からハーフスイングの三振を奪って王手をかけると2死後、筒香にフォークで空を切らせた。小さくガッツポーズ。巨人杉内と並び、戴冠を確定させた。

 当初は2桁勝利を狙うメッセンジャーが先発予定だったが、試合展開によっては能見が投げられないケースも考えられた。順序を入れ替え「監督、コーチが先発の機会を与えてくれて感謝したい。杉内君と肩を並べられたのは光栄」と振り返った。2回以降、あと1三振を奪えば、単独トップに立つ状況だった。和田監督にも「もう1回行っていいよ」と続投を勧められたが、1回で降板した。

 能見は言う。「メッセンジャーも奪三振(タイトルの)チャンスがあり、なるべく早い回にマウンドを降りたい思いだった」。私欲に固執せず、仲間を思う。メッセンジャーは先制2点適時打&8回無失点で今季10勝目。試合後、和田監督は後輩に託す金本のスピーチを聞き「優勝を知らない世代が増えてきた。伝えてからユニホームを脱ぎたかったのだろうが、後輩が何を感じて、どう行動するかが大事になる」と話す。来季につなげる、教訓の白星になった。【酒井俊作】

 ▼阪神能見が先発して2三振を奪い、巨人杉内の172奪三振に並んで初の奪三振王。阪神では06年井川慶以来6年ぶり6人目。