バレンティンを探してこい!

 阪神坂井信也オーナー(65=電鉄本社会長)が球団編成部に猛烈ゲキを飛ばした。来季の4番補強として、楽天マギーやオリックス李大浩の国内組の調査に着手している。虎の総帥はそれだけでなく、米国からの「大化け助っ人」のリストアップを厳命。あらゆる可能性を模索して、打線の底上げを実現することを求めた。

 隣の芝は青すぎる。ヤクルト・バレンティンがプロ野球のシーズン本塁打記録を更新。こんな長距離砲がいれば、4番不在という虎の悩みも一気に解消される。坂井オーナーは「外国人の補強が重要であることは明らか。バレンティンのような打者はおらんのか!」と語気を強めた。来季の戦力強化に動いている球団編成部に、猛烈なゲキとなった。

 長距離砲、4番の不在は頭痛の種だ。今季は4番新井良でスタートしたが、負傷離脱後はマートン、そして鳥谷と変化した。中距離ヒッターが多いチーム構成。相手投手に恐怖心を植えつける1発がないのが、ウイークポイントと言える。昨年オフに獲得したコンラッドも全く機能しないまま、今季限りの退団が確実となっている。打線の低迷が、8月下旬からの大失速の原因であることは歴然とした事実。大砲獲得は今オフ最大の課題だ。

 球団では中村GMが8月に渡米し、リストアップした外国人の視察を行った。その内容は、すでに坂井オーナーに報告されている。しかし現状では、米球界から目玉となる人材は出現していない。同時に、国内組で楽天マギーやオリックス李大浩の調査も進めている。すでに日本球界で実績を残しており、失敗に終わるリスクは少ない。ただし、かなりの高額条件を提示する必要があり、資金面に問題がある。国内組の選択肢を残しつつ、米球界などから新たな選択肢をより多くもつことは重要だ。

 オーナーのゲキには、早々と妥協してほしくないという意味合いがこめられている。「4番を打つ選手をとらないと、打線はなかなか変わってこない」と話した。他球団を見れば、巨人ロペスやDeNAモーガンら今年は助っ人の当たり年だった。阪神ではバース、フィルダー以来、長距離砲の獲得に成功していない。虎の総帥がかけた大号令。その成否がV奪還の鍵を握る。