<ヤクルト7-14日本ハム>◇29日◇神宮

 日本ハム近藤健介捕手(20)が、値千金のグランドスラムで勝利を呼び込んだ。2点を追う3回1死、満塁の好機にバックスクリーンに運んだ。20歳9カ月での満塁本塁打は球団史上最年少。この一打で打線に火が付き、15安打で今季チーム最多の14得点を奪い、勝率は5割に復帰、3位タイに浮上した。

 東京の夜空に舞い上がった大飛球が、猛攻の合図だった。3回1死満塁。今季初めて2番に起用された、20歳の近藤が号砲を鳴らした。プロ初の2号満塁本塁打。「ひと言で言えば“奇跡”です」。2点差をひっくり返すミラクル弾は、球団史上最年少のグランドスラム。東映時代の61年8月13日南海戦で張本が記録した21歳1カ月を更新した。「たぶん初めて」と“人生初”のおまけつきの満弾が今季最多14点を誘発した。

 汚名返上を期していた。休日だった27日。近藤は2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷にいた。黙々と約30分間、バント練習を繰り返した。前日の26日巨人戦。9回の攻撃でスリーバント失敗。その裏、チームはサヨナラ負けした。責任を感じていた。思いは通じた。本人もびっくりの大技で取り返した。「あれから(チームの)流れも悪かった。でも(首脳陣が試合で)使ってくださったので良かった」と、ホッとした表情を見せた。

 捕手登録ながら“急造三塁手”となり約1カ月。慣れないポジションに当初は下半身に負担が襲ってきた。「スパイクで人工芝を守ることがなかったので」。どの球場も本塁は土で囲まれ、捕手は基本的にその場が主戦場。内野手は人工芝の上を守ることが多く、体の使い方も変わらざるを得なかった。本拠地・札幌ドームも人工芝。試合前は連日、特守に励み下半身を慣らす。本職でなくても、巡ってきたチャンスを必死につかもうとしている。「これからもっと貢献しないと」。未来の主力候補が意地を見せ、チームは5割復帰を果たした。【木下大輔】

 ▼日本ハム近藤が3回に満塁本塁打を放った。20歳9カ月での一発は、球団では東映時代の61年8月13日南海戦(ダブルヘッダーの1戦目)で張本勲が記録した21歳1カ月を更新し、史上最年少となった。