<DeNA5-1楽天>◇8日◇横浜

 キューバを代表する強打者が堂々のデビューを飾った。DeNAのユリエスキ・グリエル内野手(30)がいきなり3安打の活躍で勝利に貢献した。3回2死無走者で左前に運び来日初安打を記録すると、5回は1死無走者から左翼線二塁打で出て追加点につなげ、7回には中前打を放った。今日9日に30歳を迎える自らの誕生日も前祝いした。

 体が思うように動かないほど足が震えた。キューバでは体験したことがない声援。「3番サード、グリエル」のアナウンスに、「グリエルコール」が横浜スタジアムを包んだ。「初めて国外リーグでのプレー。プレッシャーを感じていた」。「キューバの至宝」と言われた男でも、異国の地でのプレーに身震いした。

 2打席目に緊張を振り払った。第1打席は、楽天ブラックリーのチェンジアップを打たされて遊ゴロ。3回、第2打席の2球目、同じ球種が来た。迷いはなかった。十分に引きつけ、振り抜いた。来日初安打は左前打。ベース上で空を見上げた。続くブランコの二塁打で一塁から一気に生還した。この同点のホームを踏む好走塁で流れを呼び、この回計3得点で逆転した。

 さらに5回の第3打席は、左翼線二塁打で出てつないで、7回の第4打席は中前打を放った。3安打2得点で堂々のデビュー戦を飾った。試合後「非常に満足している。今は穏やかな気持ち」と端正な顔から笑みがこぼれた。

 バッティンググローブを外した左手には、何重にもテープが巻かれていた。5月31日の来日以降、無休で仕上げた。力強くバットを振る手のひらには血豆ができた。試合前の打撃練習は途中で切り上げるほど。そこまでして、デビュー戦に照準を合わせる理由があった。

 「国」「父」「チーム」と3つの“使命”を持って来日した。キューバの制度改革による海外移籍容認2人目(1人目は巨人セペダ)として日本に乗り込んできた。国を背負って来たからには、失敗は許されない。今後のキューバと日本の懸け橋とならなければならないという「国」への使命感。さらに日本の社会人野球、いすゞ自動車で活躍した父ルルデス氏(57)の名を汚してはいけないという思い。「僕も父のように成功しないといけない」と2世選手の責任感を背負っている。そして「DeNA」。来日前から主軸を約束してくれた期待に応えたい思いがある。

 手のまめがつぶれてもフルスイングした。第1打席は遊ゴロに倒れたが、足がもつれるほど全力で一塁を駆け抜け、併殺を阻止した。試合後のお立ち台では「私の持っているすべてを出して、ベストなプレーを見せる。アイラブヨコハマ」と本拠地のファンに力強く宣言した。【細江純平】