<DeNA4-3中日>◇15日◇横浜

 DeNAは最終回に最高のドラマが待っていた。同点に追い付かれて迎えた9回裏1死。代打トニ・ブランコ内野手(33)が放った高い放物線が左中間に向かう。スタンドに届くのか-。打球を追う満員観衆の目の先で、最前列の通路に劇的アーチは舞い落ちた。

 出迎えた中畑監督から抱きつかれ、右頬にキスをされたブランコは「去年も中日戦でサヨナラを打った時にされたね。これが問題にならないことを期待するよ」と言って笑った。左手首に違和感もあり代打で待機。いつでも行けるように6回からは監督の近くで準備していた。

 打席に向かうとき、進藤打撃コーチから「決めてくれ。早く家に帰らせてくれ」と軽口で送り出され気楽になった。「今すぐ帰してあげるよ!」。スライダー2球を空振りしたが、おかげでタイミングが合った。「フォークかスライダーか。高めを待っていた。前で拾ったので入るか半信半疑だったよ」。

 今季は4月と6月に2度、左大腿(だいたい)二頭筋の肉離れで長期離脱を繰り返した。2度目の時はグリエルの加入もあって焦りも生まれたが、今では刺激を受ける相手となった。「打席を見て勉強させてもらっている。いい仲間だ」と敬意を表している。

 中畑監督は2試合連続で興奮を抑え切れなかった。「決めてほしい人が決めると違う。こんな終わり方が待っているなら同点に追い付かれたのも許します。かっこいい、ブランコ!」。負ければ5位転落の危機を主砲のひと振りが救ってくれた。【矢後洋一】

 ▼代打ブランコがサヨナラ本塁打。DeNAの代打サヨナラ本塁打は03年7月18日小田嶋以来、11年ぶり8人目。セ・リーグで外国人選手の代打サヨナラ本塁打は77年9月14日ブリーデン、96年5月1日グレン、99年7月8日ジョンソン(いずれも阪神)に次いで4人目だ。DeNAは梶谷が先頭打者本塁打。先頭打者弾で始まり、サヨナラ弾で終わったチームは今年の7月30日巨人以来でセ・リーグ17度目。DeNAでは61年4月8日広島戦、07年4月22日広島戦、08年6月21日西武戦に次いで4度目。