<関西学生野球:京大3-0同大>◇第5週第3日◇7日◇甲子園

 関西学生野球リーグで今秋ドラフト候補のエース田中英祐(4年=白陵)を擁する京大が12年ぶりに勝ち点を挙げた。1勝1敗で迎えた同大戦に快勝。1、2回戦と連続完投した田中に代わって登板した冨田真吾(4年=茨木)が9四死球を出しながらも5安打で完封した。勝ち点は02年秋の立命大戦以来23季ぶりで、同大からは82年のリーグ発足後初めて。快進撃の秀才軍団はリーグ戦初優勝の可能性も残している。

 歴史を変えるマウンドにいたのは、田中ではなかった。リーグ戦未勝利の冨田が、10、11年リーグ4連覇の同大を完封した。「終わってみたらゼロが9つ並んでいた。気持ちがよかった。今日は浮かれます」。田中抜きで勝って、笑う。そんな日が京大にやってきた。

 制球に苦しみ1回は3四球で2死満塁。今にも崩れそうなピンチを三振で切り抜けた。3者凡退は4回の1度だけ。8回は、田中に「ピンチになったら助けてな」と声をかけてマウンドへ向かった。安打と死球で2死一、二塁も遊ゴロで脱出。総合人間学部で運動力学を学び姿勢制御を研究する右腕が、最速138キロ直球にスライダー、カットボールを駆使し、177球のリーグ戦初勝利を完封で飾った。

 12年春の関学大戦でリーグ戦連敗を60で止めたときから、勝ち点奪取が京大の明確な目標になった。「田中に負けるな」もナインのモチベーションになった。昨秋立命大戦の延長21回無失点など、驚異の投球でドラフト候補になったエース。大黒柱の存在感を認めながらも、茨木高3年夏に大阪大会16強入りした冨田は「あいつが悪かったら俺が投げてやろうと、いつもそういう意識を持っています」とライバル心を育んだ。

 野手も同じだ。先制の2点適時三塁打を放った小野翔太郎捕手(4年=三田学園)は「田中だけじゃないというのを今日の試合でわかってもらえたら」と言った。今年、1台しかなかった打撃用マシンが4台に増えたが、2台が壊れた。1台が復活後も3台を同時に使うと電力不足で不具合が起きた。佐々木佑輔内野手(2年=天王寺)が朝4時半、4番の上田遥内野手(4年=北野)は同6時半から時間差で打撃練習。エースに負けない努力をし、チームで強くなった。

 82年の新リーグ発足後は、00年秋の4勝が1季最多勝利。その更新も、残り2カード次第では優勝すら見えてくる。【堀まどか】

 ◆冨田真吾(とみだ・しんご)1991年(平3)4月2日、大阪府生まれ。大阪・茨木市立東小2年から捕手として軟式野球を始め、同市立東雲(しののめ)中では軟式野球部で投手。茨木高ではエースの3年夏に大阪大会16強。京大では通算1勝12敗。好きな投手はヤクルト館山。172センチ、68キロ。右投げ右打ち。

 ▼前回勝ち点奪取の02年秋VTR

 京大は開幕カードで立命大と対戦した。1回戦は4安打で2点を取り、2-1で先勝。2回戦は6安打で2点を取ったが、2-4で敗戦。3回戦は延長12回に3-2でサヨナラ勝ちし、勝ち点を奪った。10安打と打線も活発だった。