詰めまで誤らない-。WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(23=大橋)が前WBA同級王者河野公平(36=ワタナベ)を迎え撃つ4度目の防衛戦は、今日30日に有明コロシアムでゴングが鳴る。29日に都内で計量があり、両者ともリミット52・1キロでパス。井上は試合まで約18時間の体重増にも制限を設ける考えを明かし、最後まで万全に備える。

 バクバク、ではなく、至って落ち着いて食事を口に運ぶ井上がいた。計量後、恒例の父真吾トレーナー特製サムゲタンの食べ方にも、違いが見えた。「今回は5キロ未満にします。あまり戻しすぎないように」。パスタにステーキなどの組み合わせもあった試合直前の食事にメスを入れた。当然のように5キロ以上の戻し幅だった過去にはさよなら。「今回はそこまで慎重にやりますよ」と話す。

 反省がある。9月のV3戦では、計量後の体重には多くの気を使わずに戦った。結果は本来の出来には遠い、苦戦の10回KO勝ち。試合中に腰痛が再発したが、「体重を増やしすぎたかも」と振り返る。だからこそ、今回は5キロ未満にこだわる。そもそも、V4戦へは本来60キロ超えの普段の体重を57キロほどに保ち、減量苦を避ける工夫をしてきた。その流れを殺さず、試合時の体重にまで気を配る。

 試合でも理「詰め」に攻める。「組み立ててフィニッシュまで持っていきます。丁寧にダメージを与えて」と見込む。初回から豪快なKOを求めるファンの期待はわかるが、老練なベテラン河野が相手。「判定まではいかないと思う」とKO狙いは当然だが、そこに至る過程は順序立てる。

 状態は絶好調だ。新調整法の導入で、先週の最後の練習まで力強いパンチを放てた。その姿に真吾トレーナーは「ナルバエス戦の時のようだ」と称する。2年前、20年以上1度のダウンすらないWBO世界スーパーフライ級王者にして「アルゼンチンの英雄」ナルバエスを計4度も倒し、2回KO勝ち。当時世界最速の8戦目での2階級制覇を遂げた姿に重なるという。

 「良い感じに仕上がった。油断しないでばしっと決めます」。緻密に備えてきたからこそ、16年の大「詰め」は万全の快勝を期す。【阿部健吾】