【矢野通スペシャルインタビュー1】

 新日本の矢野通(33)が、11月12日の大阪大会で棚橋弘至(34)のIWGPヘビー級王座に初挑戦する。

 10月10日の東京・両国大会で、内藤哲也(29)を相手に8度目の防衛に成功した棚橋をリング上で襲撃してベルトを強奪。先に名乗りを上げ、棚橋も受諾の意向を見せた永田裕志(43)から、挑戦権も横取りした。

 自ら「100年に1人の逸材」と名乗る棚橋も「あいつは100年に1人の悪党だ」とあきれかえる。それもそのはず。両国大会で矢野は、永田とのシングル対決に敗れている。リバースナガタロック3でピンフォールを奪われながら、挑戦権強奪。酒しぶきをあげながら入場する金髪の悪党は、プロレス界の一般常識(笑)を、いとも簡単に覆してしまった。「俺は負けてねえ。あれは永田がお得意の金で、レフェリーを味方にしたんじゃねぇのか。せこくため込んでるみてぇだからな」とほえる。

 現在は、G1タッグリーグの真っ最中。ヒール軍団ケイオスの盟友で、今夏のG1を制した中邑真輔(31)と“ケイオス・トップチーム”を組んで初優勝を狙う。開幕戦となった10月22日の東京・後楽園大会では、棚橋・後藤組と激突。超満員のファンから「ヤノ・トー・ルー」コールを受けた矢野は、棚橋を巧みに丸め込んで赤霧でフォールを奪った。

 G1タッグリーグ白星スタートとともに、前哨戦を制して優位に立った。いつもは、矢野にサポートを受けている中邑は「矢野通、YTRの『R』はロマンスの『R』」とたたえた。

 常に中邑の陰に隠れていた男、矢野が主役になる季節がやってきた。【小谷野俊哉】◆矢野通(やの・とおる)1978年(昭53)5月18日、東京・荒川区生まれ。7歳でレスリングを始め京北高でインターハイ、全国選抜、国体、ジュニア五輪で4冠。日大レスリング部で全日本学生フリー、グレコ両部制覇。02年1月新日本入門、同5月18日にブルー・ウルフ戦でデビュー。07年真壁刀義とIWGPタッグ王座。得意技は鬼殺し、裏霞、鏡割。186センチ、115キロ。血液型B。