WBC世界フライ級王者内藤大助(34)が「神の子」をうならせた。26日に中国・上海で行われる熊朝忠(26=中国)との防衛戦に向けて14日、所属する東京・葛飾の宮田ジムで公開練習を行った。「DREAM.9」(26日、横浜アリーナ)で約1年半ぶりに総合格闘技のリングに復帰する山本“KID”徳郁(32=KRAZY

 BEE)との初の合同練習で気合が入ったのか、スパーリングでは鋭いボディーアッパーなどを披露。6階級上のパートナーにダメージを与え、絶好調ぶりをアピールした。

 内藤自身も驚くキレだった。公開スパーの2回。細川バレンタインのみぞおちに、強烈な左ボディーアッパーを見舞った。6階級上、体重にして10キロ以上も大きい昨年の全日本新人王が、うめきながら後ろを向く。「パンチが見えなかった!」。予想以上の手応えに内藤は「おい、まだ終わってないよ。入っちゃったの?」と声を掛けた。スパーの後のミット打ちでも、細かい連打、気迫のこもった動きを見せた。

 すぐ近くで見守るKIDの視線に、気分が高まっていた。同じ26日に試合を迎えることから、中継テレビ局の橋渡しで初の合同練習が実現。面識がある程度の間柄で、この日も練習は別々に行い、リング上で交わることはなかった。それでも、同じ空間に身を置くだけで、日本を代表する格闘家同士で響き合うものがあった。

 「パンチの軌道が読めないね。アッパーだと思ったらフックが来る。格闘家から見ても、あれは食らうわ」。そうKIDをうならせた内藤は、6日にもう1つの「異業種交流」をしていた。横浜市内での階段上りトレーニングで、シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子さんから陣中見舞いを受けた。303段をともに駆け上がり、こちらでも刺激を受けていた。

 格闘界2大スターの共演とあって、宮田ジムには約150人の報道陣、スポンサー関係者らが訪れた。内藤が言う。「今日は練習というよりイベントかな。でもいいことだと思う。お客さんにも注目され、テンションも上がる。オレはプロだから、下手な試合はできないなと思う」。5度目の防衛戦まで2週間を切った。取り巻く環境を楽しむ余裕も見せながら、国民的王者は気合を高めていた。【森本隆】